今年3月頃にスマート望遠鏡 Dwarf3 を用いた測光観測に関するテスト記事を書きました (前回の記事はこちら)。Dwarf3 は望遠と広角の撮影ができる2眼式なのですが、今回の記事は広角側のテスト結果になります。※本件は星見屋さんの依頼で実施しておりますが、報酬の授受は一切ありません。

Dwarf3 の広角側は、撮影した画像を FITS で保存することができる。ダークやフラットについても適切に取得すれば、撮影(ライブスタック)時に内部処理してくれる。露出時間の制御についても、望遠側と同じように秒単位で設定が可能である(広角側は最大90秒、望遠側は最大60秒)。ラブスタックで天の川を映し出すこともでき、こういった点はライバル機にあたる Seestar S30 のおまけファインダーとは大きく異なる点と言える。
FOV は約47.5° x 26.3° あり、言い換えればフルサイズ一眼に 45mm レンズを使ったときのような感覚だろう。センサーはソニーの IMX307 (1/2.8インチ) のようで、画素は 1920 x 1080 (約200万画素) 、1ピクセルのサイズは2.9 μm とのこと。レンズ性能は口径 3.4mm, 焦点距離 6.7mm という感じ (Fは約2ですね)。

測光には2秒露光で17枚スタックした FITS を用い、マカリィで G画像を抽出して実施した。アパーチャーサイズは恒星径 = 8 pix、SKY内径 = 10 pix、SKY幅 = 4 pixという設定です。約30星について測光したところ、上図のように、V等級と器械等級 (G画像) との間に、一応線形性が確認できた。
なお露出時間を2秒とかなり短くしたのは理由がある。将来的にもし T CrB が爆発したとき、極大時の明るさは約2等に達する。これをサチらせずに観測するには、露光時間をきりつめるしかない(広角側はパンフォーカスなのでデフォーカスはできない)。そこで、例えばかんむり座のα星 (アルフェッカ = 約2.2等) が飽和しないラインを露出時間を色々変えて探ったところ、2秒露光であれば飽和せずに写すことができるとわかった。Dwarf3 の広角側を用いれば、T CrB の爆発時など、明るい星の測光を行うことは十分可能、ということは言えそうだ。
ただし、上図のとおり一応線形性は確認できるのだが、望遠側に比べるとばらつきが大きいので、高い測光精度を求めてはいけない。つまり、明るい星を測光したい、変光幅が約1等以上はある、みたいなニーズには応えてくれるだろう (例: 明るいときのミラ、アルゴル、β Lyr など)。
広角ゆえにフラット撮像も重要な要素になるのは当然だが、Dwarf3 はダーク撮像用の遮蔽板が内臓されていないので、これを温度環境に応じて自分で用意する手間があることは、本機のユーザーならよく知っていると思う。もちろん、測光に用いるときもダークは重要なので、Dwarf3 で測光を行うさいは (望遠も広角も) 、1次処理に関する知識を持ったうえで、望む必要がある。
ちなみに、来年から国内でも出回るであろう Dwarf mini という新機種については、ダーク撮像用の遮蔽板が内臓されているようなので、ビギナーに優しい仕様になったのではないかと思う (Seestar と同じ感覚で使える?)。併せて広角撮像も Dwarf3 の強みを受け継ぎ FITS で行えるようなので、仮に T CrB キャンペーンで (爆発時用の) 観測マニュアルを書くことになれば、こちらに大きな期待を寄せている面がある。新機種 mini については、実は既に自己資金で予約を入れたので (フヒヒ)、手に入り次第スマート望遠鏡を「測光に使う」という変態的な使い方について検証を続けてまいる予定です。
PS. Dwarf mini の日本語情報は、星見屋さんのホームページとあわせて、天リフさんとの YouTube 対談がとても参考になります (実機のサイズ感もよくわかる!)。