
ChatGPT-5 のお力を借りて、「Seestar/Dwarf 観測星図ツク朗 β版 (1.0)」というWebアプリを開発しました (同サーバー内に設置)。まだβ版としての公開になりますが、用途としては Seestar S50, S30やDwarf3 というスマート望遠鏡に特化した観測星図を作ることができます。観測星図を表示するアプリは既にStellarium等、無料で使える大変強力なツールがありますが、新天体や移動天体(特にNEO)に対応させるには、ビギナーには幾つものハードルがあります。そこで、ここでは主に新星等の新天体や、小惑星 (特にNEO) 等の移動天体の観測&計画に利用することを想定し、以下簡単に機能と使い方をご紹介しましょう(※ご利用はPCのブラウザを推奨。あと、かろうじてタブレットの横画面なら使えるかも。スマホの縦画面は見づらいと思います。):
主な機能
- 任意の天体の位置、赤経(RA)と赤緯(Dec)を入力し(2000年分点)、それを中心座標として星図を描く。
- 星図は赤道座標、地平座標に対応(切り替え可)。
- デフォルトでは約3°×3°の範囲を描く(プロット後も0.5°ずつ可変可)。
- Seestar S50, S30, Dwarf3 の視野範囲を描画、切り替えが可能(プリセット)。
- 任意の観測地(緯度経度)の入力が可能。ブラウザ経由で自動取得も可能。
- 日時はJST(日本時間)で任意に入力可能。デフォルトではアプリを開いたときの日時が自動取得される。
- 描画される恒星は VizieR より UCAC4 と Bright Star Catalogue (BSC) を参照している。
- オプション機能で変光星 (VSX) のデータを重ねることも可能。
- 描画された星(少し右下)をクリックすると、位置、V等級などを確認できる。
- NASA JPL Horizons System (移動天体) の計算結果をコピペし、星図に重ねて表示できる。
観測星図を作ってみよう(例: かんむり座T星)
ここでは、かんむり座T星 (以下、T CrB) の星図を作ることを想定して説明します。まず、このアプリをブラウザで開くと、画面左側に 上図のような数値入力欄が出ています。デフォルトでは既に、星図を描くための中心の座標である赤経 (RA) と赤緯 (Dec) が入っています。この数値、実は T CrB の座標なので、今回のチュートリアルでは何も変更しなくて大丈夫です。
次に、座標系と図のFOVというところは、後で変更することも可能なので、今回は一旦スルーします。
次は観測地の緯度・経度の欄ですが、ここは自分で任意の値を入力して頂いても良いですし、自動取得ボタンを押して、ブラウザ経由で情報を取るのも良いでしょう。
あとは日時(JST)の部分ですが、ここはアプリを開いたときに、自動でそのときの日時を拾っています。もし昼間の時刻になっている場合は、夜を想定して例えば日本時間の 21:00 という値を入力しても良いでしょう。※なお、内部の計算では世界時(UT)に換算しています。
以上の設定ができたら、ひとまず上図にもあるとおり、「UCAC4 + BSCを取得」というボタンを押してみましょう。しばらくすると、以下のような観測星図が描かれるはずです。このとき、デフォルトでは描画する暗い星の等級(下限)が14等までになっています。β版では12~18等まで可変させられるので、必要に応じてお使いください。加えて、デフォルトでは星図内に変光星 (GCVS名) が重なるようになっているので、不要な場合はチェックを外してください(描画後に外すことも可)。
もしDwarf3用に切り替えたい場合は、描画後であっても可能です。下図のように、プリセットを切り替えて、表示範囲 (FOV) の数値を変化させれば、Dwarf3 用の視野にすぐ切り替えられます。
それから、描画後に座標系を切り替えることも可能で、事前に入力した任意の日時と観測地(緯度・経度)でもって、地平座標で表示することもできます。これは視野回転を伴う経緯台モードで観測している人に最適な機能かもしれません。以下の図はSeestar S30 の観測星図を地平座標で描いた例です。
ところで、このアプリは描画した星図内の星をワン・クリックすると、下の図のように星の位置(RA, Dec)とV等級を表示する機能があります(星図下部に表示される)。ただし、まだβ版ということもあり、星のクリックは、対象星の少し右下をクリックしてください(なぜか星の中心を押しても反応しませんorz)。なお、選択された星は下図のように、黄色のサークルが表示されるので、どの星の情報を見ているのか、一応確認することができます。
以上、このアプリの最も基本的な使い方なのでした。
移動天体を表示してみよう!
では次に、少し応用編として小惑星などの移動天体の表示方法について解説します。まずはゴールとなる星図を以下に示します:
これは最近実施された小惑星 2025 FA22 の観測キャンペーンに関連した星図となります (キャンペーンの詳細はシン・APAONのHPをご覧ください)。地球に接近する NEO と呼ばれるような小惑星を観測する場合、天体の移動が速いため事前に観測する位置や視野を確かめておくことが重要です。そこで、精密な位置計算をしてくれることで有名なNASA JPLのHorizons Systemの計算結果を用い、それをコピペすることで上図を描く機能を本アプリには持たせてあります。
それでは試しに、Horizons Systemを使って任意の期間における小惑星 2025 FA22 の位置データを抽出することにしましょう。
とはいえ、ビギナーの方はサイトが英語なので面食らった方もいるでしょう。必要な設定は2~4番のEdit の部分のみです。順に解説すると、
- Edit 2番: 天体名。ここでは小惑星の符号 2025 FA22 と入力(もちろん彗星も扱える)。
- Edit 3番: 観測地。IAUの天文台コードを持っている場合はそのまま使える。無い場合は、Edtit -> Search for a Location より、Select from a List of a Earth Locations (国と都市名) か、Specify Coordinates (緯度経度の入力) を選択して、決定してください。
- Edit 4番: 計算期間と刻み。位置を調べたい天体の計算する期間やステップを決めます。ここでは、2025-09-19 00:00~09-21 00:00とし (UT; 世界時表記)、計算のステップを30分刻みとしました。
以上の計算設定が済んだら、緑色の “Generate Ephemeris” というボタンを押しましょう。すると、以下のような結果がページ下部に表示されるはずです:
まず冒頭に出てくる数字の羅列はこの天体の軌道要素になります(詳しくは割愛)。そして、さらに下側を見ていくと、数字が表になって並んでいる欄が出てきます。簡単に言えば、これがある任意の観測地における天体の位置 (RA, Dec) や等級などを表しています。
今回は例えば、2025年9月19日16:00 UT (日本時間20日01:00) に狙いを定め、この時刻の座標を中心として星図を描いてみます。該当の日時のところにある
- 02 42 03.90 が赤経 (RA; hhmmss)
- +23 39 37.9 が赤緯 (Dec; ddmmss)
となるので、これを観測星図ツク朗にまず入力しましょう。次に観測地の緯度経度は、Horizons Systemとおよそ同じ値にしておくと良いでしょう。さらに、日時については、UTではなくて日本時間を使い、2025年9月20日01:00 JSTとします。この状態で、星図の描画ボタンを押して、任意の位置の星図が描かれるか確認しても良いです。
続いて星図内に小惑星をするために、Horizons Systemの計算結果をコピーします。このとき $$SOE〜$$EOE に囲われた範囲をコピーしてください。
あとは、星図アプリの計算結果貼り付け欄に、ペーストします。そして移動天体をプロットというボタンを押すと、先にお見せしたように、観測星図内に移動天体の位置を描くことができます。このとき、プロットされた日時については、日本時間(JST)に変換されているため、ご注意ください。
番外編
ここまで、紹介してきた観測星図作成アプリがどこまで役に立つのか、正直未知数であるが、実際にSeestarなどで観測するさいに、一つ懸念材料があるので紹介しておく。
例えば、上記の 2025 FA22 を観測しようと思った場合、位置座標 (RA, Dec) の多くは2000年分点で取り扱っています。しかし、Seeatar で任意の座標を登録して導入を試みる場合、座標系は現在分点となっているのです。この違いのおかげで、2000年分点のまま利用してしまうと、ドンピシャで正確に導入することができません。すると観測中、視野の同定に時間がかかる問題が少なからず生じます。そこで、実は2000年分点を現在分点に変換するアプリも最近作りました(これは本HP内に)。
Seestar 等をお使いで、任意の天体を登録するさいは、上記の変換アプリで現在分点に変換して登録を行うと、観測の効率がグっとアップすると思います(最近だと私はレモン彗星 C/2025 A6の観測で役立ちました)。なお、Seestarであれば、任意の天体の座標を登録する方法は「スマート望遠鏡活用ハンドブック」(21章参照) という出版物に執筆をしたことがあります。大阪市立科学館の渡部義弥さんのHPにPDFデータが公開されているので、宜しければ併せてご参照ください。
さいごに
このたび公開した「Seestar/Dwarf 観測星図ツク朗 β版 (1.0)」は三流プログラマー (基本 R しか使えない人) が AI のチカラを使って作成しました。HTML + CSS + JavaScript がベースになっているので、ソースコードは誰でも見えると思います(変なコメントアウトもいっぱいあるはず)。多分ず~っとβ版でいく可能性もありますが、近々簡単なアップデートとして、描画した星図を PNG や PDFで吐き出す機能は持たせたいと思っています。 何か不具合や改良点などあれば、コメント欄に残しておいて頂けると… 作者の気が向いたとき、時間を作って改良に励む可能性があります (^^;













