かんむり座T星の最近のスペクトル

 最近、ATel にかんむり座T星 (T CrB) のスペクトル変化に関する投稿があったので、メモを残しておく。このメモはかんむり座T星が “今すぐにでも爆発する” というのを煽り立てるものではないことを先に断っておく。しかし、この星に興味を持っている方は、引き続き粛々と、楽しみながら監視を継続してまいりましょう(私も含め)。

 なお、本メモは ChatGPT も活用している。


 さて、今回気になった ATel の投稿は以下2本である(併せて概要を箇条書きで示す):

ATel #17030
A sudden increase of the accretion rate in T Coronae Borialis

  • 過去2.5週間で水素輝線の高さが継続的に増加
  • 水素輝線の変化
    • 等価幅が 2025年1月21日~2月9日で 2倍に増加
    • ダブルピークから シングルピークに変化
  • ヘリウム輝線の変化
    • 12月に消失 → 1月21日以降、再出現
    • 等価幅が 4倍以上に増加(He I 5875, 6678, 7065Å、He II 4768Å)
    • He I 5876 に新たな赤方偏移ピークが出現(5874Å の青方偏移ピークと並ぶ)
  • 昨年11月ヘリウム輝線出現時に光度曲線が急増(←ほんま?)
  • 現在スペクトル変化はあるが光度曲線に増加なし
  • 降着率の急増を示唆 → 最終的に新星爆発につながる可能性がある
  • 爆発は今年または来年に発生すると予測されている(Schaefer et al. 2023)
  • スペクトルはHPで公開している(R = 65000 / エシェル分光器)。


ATel #17041
T CrB on the Verge of an Outburst: H alpha Profile Evolution and Accretion Activity

  • Hα 強度が増加
    • 2025年2月7日のフラックスは1月のデータと比べて約2倍。
    • 2月初旬にフラックス増加が急激に上昇
  • Hα の線幅(FWZI)の変化
    • 1月から2月にかけ、約100 km/s 増大している。
    • 線幅の増加は降着円盤の拡大を示唆(←ほんま?)
  • 降着率の上昇 → 降着円盤の拡大 → 白色矮星周囲の質量増加
  • RS Oph でも2021年の爆発前に同様の変化が観測されたHabtie & Das, 2025
  • Hα の急激な強度増加と線幅拡大 → T CrB の爆発が近い可能性が高い

 とまぁ、両方とも、とにかくスペクトル(水素などの輝線)の急激な変化について報告してくれています。そして、それは質量降着率が増していることを示唆していて、なので、もうすぐ爆発するかも、みたいな締めくくり方ですね。


 もうすぐ爆発するかどうかは一旦置いておいて、後者の ATel は RS Oph (へびつかい座RS星) の静穏期との比較があり、その点に私は興味を持ちました。ATel #17041 の主著者は Gesesew R. Habtie さんという方で、ご所属はエチオピアの Debre Berhan 大学。ATel にも引用のあった Habtie and Das (2025) は今年の1月に MNRAS で出版されたばかりの論文のようです。以下、この論文についてメモを残す:

研究の背景と目的

  • RS Ophは、白色矮星(WD)と赤色巨星(RG)からなる共生型反復新星であり、約 15 年周期 で爆発を繰り返す。
  • 爆発メカニズム:
     白色矮星が赤色巨星の恒星風から物質を降着し、臨界質量に達すると熱核暴走反応が発生し、新星爆発が起こる。
  • 静穏期の重要性:
     降着円盤の進化や降着率の変化が次の爆発の発生に関係すると考えられるが、詳しくは解明されていない。
  • 目的:
     2006 年から 2021 年の静穏期における RS Oph の分光特性を調査し、降着円盤の進化を明らかにする。

結果

(1) Hα、Hβ 輝線の変化

  • Hα、Hβ の輝線はすべての時点で観測され、時間とともに強度が増加
  • 2018年以降、特に Hα の輝線強度が急上昇 → 降着率の増加を示唆
  • スペクトルのプロファイル:
    中央吸収を伴うダブルピーク構造を持つ時期があった
  • 2021年の爆発前に Hα の線幅が顕著に拡大(降着円盤の進化を示す)

(2) He I, Fe II 輝線の変化

  • He I(5876Å, 6678Å, 7065Å)と Fe II の輝線が 2018 年以降に顕著に増加
  • 鉄の存在量が時間とともに増加 → 赤色巨星の恒星風から供給された可能性
  • ヘリウムの存在量は減少傾向 → 降着物質の水素で希釈された可能性

モデル解析

  • CLOUDY を使って、数値計算。
  • 降着円盤の温度と輝度が、ともに増大傾向(2018年以降さらに増加)。
  • 2008~2016年、降着円盤の密度と外半径が、ともに増大。
  • 2018~2020年、円盤の内側の密度はさらに増加。一方で、円盤の外側の密度は減少。円盤の外半径についてはさらに増大。
  • 2018年以降、質量降着率が急上昇。

結論

  • RS Oph のスペクトルから静穏期における降着円盤の進化を分析した
  • 2018年以降、質量降着率と輝線強度の急増を確認
    → 爆発の準備段階に入っていた可能性が高い
  • Hα、He I、Fe II の増加が爆発前兆の指標となる可能性
  • 降着円盤の拡大が加速
    → 今後他の反復新星の爆発予測において、静穏期の分光観測が重要
  • 継続的な分光観測とモデリングによる爆発予測の精度向上が求められる

 ふ~む、なるほどねぇ1。こういう具体的な観測例をもとに、爆発の前兆について考えるのは面白いと思いました。この手の共生星のスペクトル(輝線)については、共通大気 (common envelope) 由来のものが支配的なのかな、と勝手に思い込んでましたが、降着円盤由来だと考えらているのですね。天文学辞典にも載ってました。

 ちなみに、RS Oph の場合、輝線の急な増大は2018年以降にあったとのこと。論文内の Fig. 5を見ると、2020年にやたら質量降着率と降着円盤の半径が増大しているグラフになっています。RS Oph の前回の爆発は 2021 年でしたので、まぁ、スペクトルに何か大きな変化があったとしても、爆発までは1~3年くらいのラグがあるのでしょうか?!このあたりは、RS Oph だけではまだまだ分からないはずなので、今後 T CrB がどうなっていくのか、粛々と監視を続けてまいりましょう (^^v


  1. 偉そうにメモしているが、実はかなり久々に論文なるものを眺めた。ChatGPT のお陰で頭の中が整理しやすく、時短にもなるが、現役の院生さん(ちゃんと研究している方)なんかは、きちんと原文や図表を読みとく習慣はあったほうが良いと思う。 ↩︎
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INNOREL の三脚 (RT90CG)

 Amazon で人気らしい INNOREL の三脚 (RT90CG) をポチってしまいました。脚の太さは40mm あり、評判通りがっちりしています。本体の重量は約2.8kgで、手に持ったときの第一印象はやはり軽いです(耐荷重は40kgらしいですね)。迷彩柄については、脚にマジックテープ式のモノが巻かれているだけで、着脱が可能です。これを外すと下地は脚を伸ばしたときに出てくる黒地と同じになります。

 自分の用途としては、ジッツオ5型の互換アダプターを介して ZWO AM5 赤道儀を載せ、遠征先で小型の鏡筒を運用するときに活用する予定です。なおアマゾンのレビュー内には、私と同じ目的で ZWO AM5 赤道儀を載せている方もいました。下の写真のように、AM5を載せたときの親和性は高く、遠征時の運用が楽しみでなりません。付属のストーンバッグにはポータブルバッテリーと、念のため転倒防止のために3~5kgのウェイトを載せることになるでしょう。

 ちなみに、お値段については、自分がポチったときは3万9999円でした。これに約7000円プラスすれば(国内の場合)、AM5 などに使える ZWO 純正の TC40 というカーボン三脚が買えてしまうので… AM5 の運用が前提で軍資金に余裕があるなら、純正で良いと思います (純正は重量約2.3kg、耐荷重50kgなので、スペック的にもこちらに軍配が上がる)。ただ自分の場合は、クレジットカードのポイントを5000円ほどアマゾンギフトカードに突っ込んだので、今回約3.5万円で手に入れた感じです。なお本三脚の天文用途でのレビューについては、YouTube の “ボスケのレンキンTV” さんがとても参考になります。詳しいレビューは是非、こちらをご覧ください:

 ボスケさんのレビューが素晴らしいので、特に私が書くことは無いのですが、ちょっとだけ、細かい点を見ていきたいと思います。まず、ジッツオ互換の付属アダプターは上部に 3/8 インチネジが飛び出しています。側面には抜け防止のための溝も切ってあります。

 アダプターの着脱については、レバーを緩めるのは当然のこと、三脚側にスイッチみたいなのがあるので、これを押しながら引き抜きます。このスイッチは、下の写真のように、アダプターの抜け防止のための爪を可動だせるためのものです。

アダプター着脱用のスイッチ
アダプター抜け防止用の爪

 あと付属品の中には、以下のようなパーツがありました(頭のネジは3/8インチ)。これは水平を自在にぐりぐり調整できるアダプターで、天文用途でも使用する機材によって、大変活躍してくれそうです(例えば Seestar など)。

 それから三脚ケースも良い感じです。ボスケさんも仰るとおり、クッション材も入っていて、けっこうしっかりた作りです(迷彩柄なので目立ちますがw)。ただ私は車での遠征がメインなので、ケースには入れず(出し入れが面倒というのもあるし)、車には裸でポンっと積み込むだろうなと思います。なおケースの全長は約80cmあり、折りたたんだ状態の三脚(約60cm)に比べるとちょっと長いです。このケースに三脚を収納すると、以下のように少しだけ (約18cm) スペースが空きます。機材によってはヘッド部に AZ-GTi とかを搭載したままケースに収納できそうな感じです。

 以上、まだ本格運用はしていませんが、簡単にご紹介まで。

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Seestarで地球接近小惑星 2024 MK を観測してみよう!

はじめに

 つい先日、星見屋の南口さんより、2024年6月16日にATLASによって発見されたばかりの地球接近小惑星 (NEA) 2024 MK について、Seestar S50 で観測したら面白くないですか?という感じのお話を頂戴しました。 事の発端は以下、新進気鋭の天文学者・紅山仁さん (博士) の X ポストとのこと。

 それで、私も色々調べたり、はたまた紅山博士から DM で少しご意見を賜ったりする中で、「ふむ、これは多数の Seestar で観測したら市民科学として面白いかも」と思うようになりました。それで、例によってイチ観測者(個人)という形で、南口さんからの依頼として急遽「Seestarで小惑星 2024 MK を観測してみよう!」をでっちあげることにした次第です(※星見屋さんからの金銭の授受は一切ありません)。

 あと、最初に断っておくと、恥ずかしながら小生は太陽系天体にはあまり明るくないです(専門は一応、新星などの変光星です)。ここに書くことは、科学的なお話よりも、観測手法的な側面が強いので、予めご了承ください。

小惑星 2024 MK について

 2024 MK は先にも書いた通り、2024年6月に発見されたばかりの NEA (地球接近小惑星) です。どうやら (ESA などを見ると)、6月29日13:46 (UT) に最も地球に近づき、その距離は約29万kmに達するみたいです(月軌道よりも内側)。これは日本時間だとちょうど前半夜の29日22:46頃にあたります。MPC などの予報では見かけの明るさが約9等になっています。あと、小惑星の大きさは120~260mらしいです。

2024年6月29日22時46分 (JST) の小惑星2024MKの位置 (観測地: 徳島県阿南市). Stellarium でシミュレーションした様子.

 最接近時の 2024 MK の位置については、いて座の東側となります。そのため、お天気次第にはなりますが、高度的にも観測はしやすい位置だと思います。ちなみに(当然ながら)、スカイ・モーションは非常に速いです。MPC で調べてみると、日本時間29日23時頃だと、1分間に約380秒角 (約6.3分角) も動くようですね。Seestar の場合、最短露光時間が10秒なので、観測に成功すれば、1枚の露光で約1分角くらい線状に延びて写ると考えられます。そのため、約9等の天体とはいえ、Seestarでどの程度のクオリティで写るかは、やってみないとわからない部分があります。夜空の明るさの影響も受けそうですが、筆者の肌感覚では市街地で無ければ、十分観測できると考えています。

Seestar を使った観測方法について

 今回の観測では (紅山博士のご助言を受け)、多数の Seestar ユーザーによって、小惑星 2024 MK の明るさ (見かけの等級) を得ることが主な目的となります(紅山博士によれば、「明るさの情報のみから小惑星の表面状態を推定できる可能性がある」とのことです)。

 ただし、Seestar は直接 2024 MK に GoTo するための導入データがありません。そのため、Seestarが持っている天体リストを使い、その領域を小惑星が通過するところを観測する、待ち伏せスタイルで実践する方法をご紹介します(これならビギナーでも簡単だと思われます)。

NGC6818 のあたりをちょうど通過する小惑星2024MKの様子(@徳島県阿南市/Stellariumより).観測地にもよるが、2024年6月29日のおよそ23時8分~23時15分頃 22時27分~22時34分頃 に、Seestar の視野内を通過していく.手書きの時刻と位置は JPL の ephemeris (計算結果) をもとに追記.今回 Stellarium の計算結果は使わないほうが良いです.

今回、Stellarium など星図ソフトの計算結果 (位置・時刻) は
使わない方が良いです!!上図のように、大きく時刻・位置がずれます。

 実は Seestar で小惑星 2024 MK を観測した場合、NGC6818 をちょうど中央に導入しておくと、2024年6月29日23時8分~23時15分 22時27分~22時34分頃に、約7分間かけて視野内を通過していきます(徳島県阿南市の場合)。他にもNGCやIC天体の近くを通過しないか調べましたが、偶然にもこの天体のみが、最もドンピシャで良い待ち伏せ対象でした。箇条書きで簡単にま観測方法をまとめると…

  • 詳細設定で「画像補正中の画像を保存する」に必ずチェックを入れよう。
  • 6月29日23時前 22時頃から観測準備をしよう(時間に余裕を持って)。
  • Seestar でNGC6818を導入しよう(南東方向、高度約30°)。
  • 観測開始(本番)前に、一度撮像テストをしましょう(露出は10秒で!)。
    ※ダークなどの撮像を事前にしておくため(本番の撮像がスムーズになる)。
  • 23時4~5分 22時25分頃から撮影をスタートさせよう。
  • 無事に小惑星が線状に写りこんだら、視野外に消えるまで撮影(スタック)を継続しよう。

 ご自身の観測地(緯度経度)における詳しい位置や通過時刻を知りたい場合は、Stellariumを使うと簡単に調べられます(参考: Stellarium に任意の小惑星・彗星を追加する方法)。
 ※今回は JPL の Horizons system を使いましょう!

 なお、今回の観測データとして重要なのは、スタックされたFITS画像ではなく、スタック前の個々に保存されたFITS画像となります。これは先の箇条書きの1番目の設定をすることで、Seestarの内部ストレージに別途保存されます(※ただしスタックが成功したファイルだけ)。この詳細設定の手順については以下をご参照ください:

観測前にSeetar の詳細設定「画像補正中の画像を保存する」に必ずチェックを!

【観測に強い方へ】
 もし可能であれば、NGC6818の視野外に小惑星が出たあとも、異なる視野で観測を続けてみてください。異なる視野・時刻・地域で観測されたデータもサイエンスに役立ちます!さらに付け加えるなら、観測開始は22時30頃 22時頃から始めてもかまいません。
 ただし、いずれの場合もNGC6818とは異なる視野になります。Seestar は任意の RA, Dec を入力して導入できないので、観測視野はご自身で星図から見定め、 2024 MK を待ち伏せておくと失敗が少なくて良いでしょう。観測の計画をたてるさいは、ステラナビゲーターや、Stellariumに 2024 MK を登録して、事前シミュレーションして待ち伏せ場所を決めておくと良いです。 ※今回は JPL の Horizons system を使いましょう!

観測に成功した場合について(報告)

 Seestarで観測された方は、是非以下のフォームより観測の簡易的なご報告をお願い申し上げます(測光作業は不要です)。画像データの報告方法については、別途検討したいと思っていますので、準備ができ次第、改めて報告者の皆様に E-mail でご連絡を差し上げます (From: Imamura Kazuyoshi)。

 

 その他、もし何かご不明な点があれば、この blog 記事のコメント欄に、ご記入ください。

 梅雨どきの急な観測テーマですが、一晩限りの一期一会な観測にチャレンジしてみませんか?Seestar で撮影したあなたのデータが、科学の発展に寄与するかもしれません!

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Stellarium に任意の小惑星・彗星を追加する方法

 Stellarium は小惑星や彗星のリストを一応持っているのですが、デフォルトではそんなに多くない印象です。プラグイン機能を使えば、MPC から大量のデータを DL して放り込むことができるっぽいのですが、今回は任意の天体だけを追加する方法について、備忘録的に書き残します(筆者の Stellarium のバージョンは 23.3.0 です)。

 Stellarium を開いたら、まず「設定画面」をクリックします。

 設定画面が現れたら、次に「プラグイン」を押します。

 続いて、左側のメニュー内から「太陽系エディター」を選び、「設定」ボタンを押しましょう。すると以下のような小窓が開きます。

 新たに開かれた小窓の中に、「太陽系天体」というタブがあるのでこれを押します。そして、「MPCフォーマットで軌道要素を取得」というボタンがあるので、これを押します。すると、以下のようにまた新しい小窓が登場します。

 また新しく出た小窓の中にある「オンライン検索」というタブを押します。すると、任意の小惑星や彗星を検索するための入力欄が出てきます。ここでは、ごく最近発見された (2024年6月16日) 小惑星 “2024 MK” について検索します。検索するときは、虫眼鏡のボタンを押しましょう。

小惑星 2024 MK が無事に追加できている様子.

 MPC にデータがあれば、検索にヒットしてくれます。チェックボタンを押して、「天体の追加」ボタンを押せば、自動的にStellarium内のリストに取り込まれます。ちゃんと追加できたかどうかを確かめたい場合は、先に登場した小窓「太陽系天体」のタブ内にある天体リストを確認すると良いです。

Stellarium で小惑星 2024 MK を表示している様子.

 無事に任意の小惑星・彗星が追加できれば、Stellarium の星図内で位置や見かけの明るさなどの情報を確かめることができます。

 なお市販(国産)のステラナビゲーターでは、彗星や小惑星のリストは、ソフト内で更新をかければ、ある程度新しく発見された天体も拾ってくれます。しかし、発見後間もない場合は、対応しきっていないこともよくあります。そんなとき、ステナビでは自分で軌道要素を打ち込めば、任意の天体を追加できます。この場合は自力で軌道要素を MPCJPL などで確認・入力する必要があります(移動天体に慣れた観測者であれば朝飯前な作業かもしれません)。ただ、この作業はあまりビギナー向きとは言えません。

 一方で Stellarium は、仮に軌道要素の意味を理解していなくても、MPC 検索にヒットしてくれれば、簡単に任意の小惑星・彗星を追加することができました。フリーソフトでありながら、このプラグインは初心者にも大変優しい機能といえるでしょう。


追記 (2024/06/28)

 新しく発見されたばかりの小惑星や彗星の場合、観測点が増えることで、随時軌道要素が更新されることがよくあります。その場合、予報の時刻や位置が少し変わることもあるので、綿密なスケジュールで観測を行う場合は、軌道要素の修正はやっておいたほうが良いでしょう。そのため、Stellarium であっても、自力の手入力による軌道要素の修正が求められる場合があります。以下、簡単にその方法を書き残す。

 まずは JPL の Horizons system より最新の任意の天体の最新の軌道要素を調べましょう(例: 2024 MK)。

※2024 MK のような NEA は、地球に近づくほど、地球の重力の影響を受けて刻々と軌道要素が変化します。このような天体の場合、JPL はこの影響を考慮して計算結果 (ephemeris) が作られます。しかしStellariumなどの星図ソフトでは、地球の影響が考慮されいないので、要注意です

 上記のような感じで2024 MKの軌道要素を呼び出してみると、以下のような情報が得られます(一部抜粋)。

JPL/HORIZONS                      (2024 MK)                2024-Jun-28 06:53:02
Rec #:50675288 (+COV) Soln.date: 2024-Jun-28_00:05:25 # obs: 120 (52 days)

IAU76/J2000 helio. ecliptic osc. elements (au, days, deg., period=Julian yrs):

EPOCH= 2460477.5 ! 2024-Jun-16.00 (TDB) Residual RMS= .11432
EC= .5479829575940028 QR= 1.009156750528175 TP= 2460501.9751860844
OM= 277.8791599915774 W= 13.22263263112265 IN= 8.456112803527166
A= 2.232563500607485 MA= 352.7685673489779 ADIST= 3.455970250686795
PER= 3.33591 N= .295459762 ANGMOM= .021500267
DAN= 1.01872 DDN= 3.34835 L= 290.9630177
B= 1.927562 MOID= .00188307 TP= 2024-Jul-10.4751860844

Asteroid physical parameters (km, seconds, rotational period in hours):
GM= n.a. RAD= n.a. ROTPER= n.a.
H= 21.803 G= .150 B-V= n.a.
ALBEDO= n.a. STYP= n.a.

 次に、Stellarium 内に保存されている 2024 MK の軌道要素を手動で更新しにいきます。そのためには、まず Windows の場合「隠しファイル」が見えるようにしておきましょう。その上で、以下のディレクトリまで辿り着いてください (XXXXの部分はWindowsのユーザー名です)。

C:\Users\XXXX\AppData\Roaming\Stellarium\data

 ”data” のディレクトリに辿り着いたら、そこに “ssystem_minor.ini” というファイルがいるので、これをメモ帳などの適当なエディタで開きましょう。その中に、2024 MK の軌道要素が記述された部分があるはずです。

 目的の天体の軌道要素の部分が見つかったら、あとは数値を JPL からコピペし、手動で書き換えていきます。書き換えが済んだら、上書き保存してください。そして、Stellariumを起動すれば、新しい軌道要素で小惑星や彗星を表示することができます。なお、コピペすべきパラメータの対応表は以下の通りです(※JPLは0.2122などを “.2122” という感じで、ゼロを省略しているので注意):

Stellarium の表記JPL の表記
orbit_SemiMajorAxisA
orbit_EpochEPOCH
orbit_EccentricityEC
orbit_AscendingNodeOM
orbit_ArgOfPericenterW
orbit_InclinationIN
absolute_magnitudeH
orbit_MeanAnomalyMA
orbit_MeanMotionN
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かんむり座T星の監視・観測キャンペーン開始

キャンペーンのバナー (日本変光星研究会より).

 日本変光星研究会のホームページに『反復新星かんむり座T星の爆発を監視しよう』というキャンペーン用の特設ページが立ち上がりました。しかも Seestar S50 を使った監視・観測キャンペーンになっておりまして、お察しのとおり、この blog の筆者が仕掛け人でございます。これまで Seestar を使った測光観測等の検証をやってきたのですが、次のステップとして、この望遠鏡で変光星観測を行う人が増えればと思い(普及活動として)、T CrB をターゲットにした次第です(何とか爆発する前にスタートできた良かった… )。これを機に、自分で測光するような人が増えてくれれば嬉しいですし、さらにこれまで変光星なんて一切興味の無かった多くの人たちの好奇心をくすぐることができれば幸いである。

参考資料 / これまでの関連記事など
SeeStar S50 を使った測光観測の検証
SeeStar S50 を使った食変光星の測光観測
SeeStar S50 を使った新天体の確認観測
天体リストに無い天体の導入 (Seestar S50)
デフォーカスを用いた明るい星の測光 (Seestar S50)
Seestar S50 で天体スペクトルを撮る
※これらの検証結果は2023年3月に明石市で開催された「天体画像教育利用ワークショップ」で発表しました。

なお Seestar を使った測光観測の検証や変光星観測への応用と普及については、南口雅也氏(星見屋)から依頼を受け、実践しています(謝礼や報酬の授受は一切ありません)。

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ジッツオ互換で AM5 を EQ6 ピラー脚に装着したい

コスモ工房さんで作って頂いたアダプター (T3746) の雄姿.これでEQ6 用ピラー脚へのAM5の着脱が楽ちんに!ノブネジの先端は樹脂系になっており、ボス部分に傷が入らない親切設計.

 以前、ZWO PE200 というハーフピラーを導入した記事を書きました。その後も、EQ6 付属の三脚とともに、遠征先や自宅で活躍してくれているわけですが… 人間おそろしいもんで、何か一つ解決すると次なる欲が湧いてくるわけで…

 そもそも ZWO の AM5 はオプションの三脚を見てもわかる通り、赤道儀と三脚の接続はジッツオ5型の互換規格で接続されます。純正のオプション三脚はそこそこ高いので、ユーザーの中にはアマゾンで見かける INNOREL RT90CG というジッツオっぽい三脚を使っている方もいるようです。

【左】AM5 + EQ6付属三脚の接続例.【中央】AM5 + PE200 + EQ6付属三脚の接続例.【右】AM5 + EQ6用ピラー脚の場合.いずれもコスモ工房さんのパーツを使用.

 はじめ、自分は AM5 を導入したさい EQ6 の付属三脚での運用を考えていたので、コスモ工房さんからアダプター T3391 を購入し、これを AM5 の底面に装着して観測していました(上図【左】)。しかしあるとき、望遠鏡と三脚の衝突事故を機に純正のハーフピラーを導入。これによって、AM5 の底面には冒頭の写真のとおり、ジッツオ互換のボスがつくことになりました。なおハーフピラーの底面には先の T3391 がくっつき、これで EQ6 付属三脚に接続できます(上図【中央】)。

 しかし、自分は EQ6 用のピラー脚も持っているので、自宅での運用時はこちらに AM5 を載せたくなるようになってしまいました(あぁ… なんて欲深い)。このピラー脚はキャスターが付いているので、これが何かと便利なのですよね。もちろん、コスモ工房さんのアダプター T3391 を使えば、ピラー脚に付属するメスパーツを使って装着できるのです。しかし、この方法は二つめんどいことがあります。

  1. EQ6用ピラー脚のメスパーツは、一度ピラーから取り外さないと、赤道儀との脱着ができない。
  2. 運用方法によって、T3391 をAM5側に取り付けたり、ハーフピラーPE200側底部に取り付けたり交換作業が煩雑になる。
EQ6用ピラー脚に付属している赤道儀接続アダプター.赤道儀との接続はピラー側のノブネジを使う.このノブネジはピラーに装着された状態では回すことが不可能.

 「このくらい贅沢言わず頑張ってやれよ~」って言われそうなのですが、兎にも角にも AM5 の底部パーツの交換はなるべくしたくないのです。1つの赤道儀に対し、脚への接続方法が混在していると、万が一遠征先でパーツを忘れたりしたら望遠鏡を組み上げることすらできません(実は1回やらかしましたw)。そこで、AM5の底部は純正のジッツオ互換ボスのままいくとして、ピラー脚のほうがどうにかならないか、特注パーツの製作をコスモ工房さんに相談してみることにしました。

コスモ工房製 T3746 をEQ6用ピラー脚に取り付けた様子.
ピラー脚との接続は T3746 側にネジが切ってあるので、3点できっちり固定されます.

 その結果、色々と試行錯誤して頂き、夢のパーツ T3746 をお作り頂くことができました。これはZWOの三脚やハーフピラーに使われているジッツオ5型互換系のボスを受けることができ、3点のネジで締め上げて固定することができます。もちろん EQ6 用ピラー脚に接続できる設計になっている優れモノです。このパーツのお陰で、ピラー脚への AM5 の脱着も大変効率的になりとってもハッピーになりました。

T3746 を介して AM5 と望遠鏡 (ミード25.4cm) を載せた様子.3点のノブネジで、ジッツオ互換ぼボスをしっかり締め上げて固定.

 AM5を載せ、さらに手持ちの一番重い機材ミード25.4cmとカウンターウェイトを載せてみました。特にガタつくこともなく、ガッチリ固定されており、夜の撮影でも安心して運用できています。コスモ工房さん、この度は大変お世話になりました m(__)m ペコリ

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新星 V1723 Sco を Seestar で撮影するための情報

※本記事は2024年2月14日午前に、画像の差し替えや追記など、改訂しています。

 さんから、2月9日にさそり座で発見された新星 (V1723 Sco / PNV J17261813-3809354) について、Seestar S50 で撮影するための情報を整備して欲しいという依頼を受けたので、取り急ぎ記事を書きます。

 まず、今回の新星の日本語情報については、国立天文台の前原裕之氏が書かれた VSOLJ-news をご参照ください(新星の赤経・赤緯も載っています)。さらに、AstroArts さんにも記事が出ています。

 さて、Seestar S50 は任意の座標を入れて天体を導入することができません。そのため、新天体のような場合、下記のような星図 (例: Stellarium) をもとにして、Seestar アプリの星図と見比べながら、手動で導入位置を決めるしかありません。あと、V1723 Sco はさそり座の尻尾のあたりで発見されています。地域にもよりますが、今の時期、観測時刻は未明5時~5時30分くらいになり、さらに高度も10°前後で撮ることになる人が大半でしょう。近々撮影したい人は、南東方面の視界が開けていないといけません。

2024年2月14日朝5時30分頃、南東方向の空 (以下、いずれもStellarium で作成).
Seestar アプリでもどんどんさそり座の尻尾のあたりを拡大してみよう (※画像改訂).
さらに拡大… (途中までシャウラという星が目印になるかも)
Seestar の星図とも比較しながら、どんどん拡大する(※画像改訂). このとき、目印になりそうな星の並びを決めておくと良い(例えば、上図の緑線で示した台形の星の並びなど)。
赤い枠は Seestar の視野. 中央の印が目的の新星 V1723 Sco の位置です (※画像改訂). 先に例で示した台形の星の並びが視野に入っていれば、新星 1723 Sco が写るはずです.

 上記のような星図 (Stellarium など) と見比べて、導入すべき位置がある程度決まったら、導入ボタンを押しましょう。あとは実際に撮影してみて、周囲の星の並びや明るさから、お目当ての新星が写っているのか、同定するだけです(これが慣れるまで難しいかもですが)。

 ちなみに、上記の星図は筆者の観測地点から、日時を2024年2月14日未明5時30分として、地平座標で描かれています。そのため、観測日時や地域によって、上図の視野が多かれ少なかれ回転することになるので、厳密に見比べたい方は、自分の PC などで、適当な星図ソフトを動かす必要があります。Stellarium と見比べて導入する方法については、過去に記事を書いたので、宜しければ参考にしてください。

 V1723 Sco の明るさについては、VSOLJの報告データによれば、 2/10 未明は約6等台、2/11未明は11日未明は約7等台前半、12日未明は約7等台半ば、という感じのようです。14日未明はもしかしたら8等台ですかね?!とは言いましても、新星は単純にスゥ~っと暗くなるのもいれば、ときどき何回も再増光するようなのもいるので、今後どんな振る舞いをするのか、それは観測し続けないとわかりません。


※以下、2月14日午前の追記分です。

2024年2月14日未明に Seestar S50 で撮影された V1723 Sco の画像. 【左図】星見屋さんの南口氏による作例@東京都大田区. 【右図】筆者による作例@徳島県阿南市. 右図の緑色線(台形)は、先の導入のときに、例として目印にした星の並び.

 幸い天気に恵まれて、上図のように、東京の星見屋さんも徳島の筆者も14日未明に撮影ができました。新星の明るさについては、画像を見る限り近くに写っている8等くらいの星よりかは明るそうです。高度10°くらいでの撮影ということもあり、大気の影響を受けまくりで、測光は少々気が乗らないのですが、一応 G画像について測定してみます(※後程結果を追記します)。

【※測光結果の追記】
 比較星を10個ほど選び、G画像について測光してみたところ、約7.35±0.08等という結果になりました(比較星等級はAPASSを使用)。あと合焦状態で飽和していないことも確認。大気減光が強いことや、先般公開したG画像の分光感度特性も考慮すると、ちょっと明るい数値が出ている気がしないでもない。この結果は、他の変光星観測者のデータも参照・比較して、もう少し吟味したいところです。

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Seestar S50 で天体スペクトルを撮る

はじめに

 Seestar S50 の測光観測に関する検証について、2023年10月頃に一発目の記事を書いた。この記事の最後に、「さらに検証してみたいこと」として、以下3点の課題を挙げていた。

  • 連続測光観測について
  • デフォーカスした状態での測光について
  • 本機の分光感度特性について

このうち、連続測光観測デフォーカス測光については、2023年11月頃と12月頃に検証が済んでいる。

 今回、Seestar S50 でスペクトルを撮るというまた邪悪な使い方を試みたのは、上記の未検証であった分光感度特性について調べてみたかったからである。測光において、RGBのG画像がどのような波長帯の光を透過しているのか、これを示しておくのは、今後 Seestar S50 の測光データが市民権を得るためにも、最低限必要なことであろう。

 なお本件は、星見屋さんから依頼を受け、日本変光星研究会の所属として、Seestar S50 のの観測的な検証を実施している。(相変わらず、関連する知識が無いとわかりにくい記事だと思うが、あくまで普及目的ではなく、その前段階として必要な “検証” が目的ということで、どうかご容赦頂きたい)

Seestar S50 の分光感度特性

 さて、今回スペクトルをどうやって撮ったのか等、細かい部分も含めると、また記事が長くなりそうである。そのため、先に結論的な部分から示しておく。本検証で得た Seestar S50 の分光感度特性は以下の通りだ。

Seestar S50 とIMX462の分光感度特性.

 このスペクトルは Seestar を使ってポルックス (K0III) のスペクトルを撮り、グラフ化している。R, G, B の強度(Y軸)は、それぞれサンプル数を10として移動平均をとり、さらに概ねピークを1として規格化した。軽い移動平均をかましているとはいえ、グラフ上にはポルックスじたいの吸収線が乗っかているので悪しからず。一方で破線のプロットは Seestar に搭載されている CMOS チップ IMX462 (SONY製) の分光感度特性になる。これは色々なところで、グラフが公開されているので(例: 株式会社アルゴ)、グラフ(画像)から数値を読み出すソフト”WebPlotDigitizer” を使って抽出し、比較のため併せてプロットしてみた次第。

 グラフを見ると、R, G, B それぞれ IMX462 のカタログ値に類似したプロファイルが得られている。しかし Seestar には UV/IR カットフィルターが内臓されているため、短波長側は約4000Å、長波長側は約7000Åあたりから綺麗にカットされている。その一方で、なにやら B, G は赤い領域(約6800Å)に2次ピークのようなものがあり、余計な波長帯の光を少し通す特性があるようだ。

Seestar S50 と測光標準システムの分光感度特性.

 では次に Seestar と、測光標準システム (Johnson-Cousins) と比較してみよう。Seestar の B画像 については、標準システムBのピークと500Å以上のずれがあり、透過帯域も異なる。さらにSeestar の R画像 については、標準システムの Rc とピークの位置や短波長側の立ち上がりは似ている。しかし、長波長側については、UV/IRカットフィルターの影響を受けており、標準システムと透過帯域は一致しない。そして、Seestar の G 画像については、標準システムVとピークの波長は似ている。しかし、G画像 は透過域が短波長側&長波長側に少し袖があり、Vバンドと比べると透過域の幅が広いことがわかる。

Seestar S50のG画像、測光標準システムのVバンド、デジカメのG画像の分光感度特性.

 ついでに Seestar G画像、標準システムVバンド、デジカメG画像で比較してみよう(デジカメGについては、過去に自分で測定したデータを使用している)。デジカメG画像と標準システムVバンドのプロファイルが似ていることは言わずもがな、10年以上前から明らかとなっている(研究例: 小野間, 2009)。しかし、Seestar のG画像については、先ほども述べたとおり、透過帯域が少し広く、さらに赤い波長域にも少し感度がある。そのため、色が極端に赤い星や、新星などの強い輝線を出すような天体を測光する場合は、VバンドやデジカメのG画像よりも少し明るい測光値が出てくる可能性があるだろう。

 ここまでの話について、箇条書きで簡便にまとめておく(特にSeestarのG画像について):

  • 本機のG画像は測光標準システムのVバンドと比較すると、透過域内のピーク波長は似ている。
  • 本機のG画像はVバンドに比べると透過域(袖)が少し広い。加えて長波長側(約6800Å)にも少し透過域がある。
  • このような分光感度特性から、SeestarのG画像を測光すると、天体によってはVバンドと比べると少し明るい結果になる可能性がある。

Seestar でどうやってスペクトルを撮ったのか?【前置き】

 ここからの話は、あくまでオマケである(前置きが長いのでご容赦を)。

 そもそも Seestar S50 で天体スペクトルを撮った理由は冒頭でも述べた通りだ。しかし、スマート望遠鏡の発展や可能性を考慮すれば、私のような邪悪な使い方が、今後誰かの役に立つかもしれないので、現段階のノウハウ等を記録として残しておこうと思う(実はけっこう試行錯誤が必要だった)。

 そもそも何故、分光感度特性を調べるために、Seestar で天体スペクトルを撮ったのかを書いておく。言わずもがな、Seestar はオールインワン望遠鏡であり、内臓されているカメラなどをバラすことは基本できない(海外の分解好きな人は既に本機を解剖実験しているようであるが)。私が過去に調査したデジカメの分光感度特性については、カメラレンズ(f=50mm)、島津製作所の実験室用分光器(スリット + コリメーター + 透過型回折格子 200本/mm)、水素の比較光源、白熱球を使い、室内でデータを撮ることができた。ところが、Seestar は焦点距離250mmのレンズを備えた望遠鏡であり、室内のような狭い空間ではまず合焦がままならない。室内テストとして、対物レンズ側に透過型回折格子を貼り付け白熱球などの光源を撮ることも試みたが(2023年12月頃)、スリットレスでは室内におけるスペクトルの取得はとても困難であった(そもそもFITSで保存することもできない)。

 そこで、恒星のスペクトルを撮ることで、本機の分光感度特性を明らかにすることにした(星での本格テストは2024年1月3日から開始)。ちなみに、実際に手を動かすきっかけになったのが、Facebook の Seestar 公式グループにあったとある投稿だった。その内容は本機でシリウスのスペクトルを撮ったよ、という刺激的なもので (Kai Yung さんの報告)、「おお、Seestar で邪悪なことをしている同志に先を越された!」という、良い意味でライバル心のようなものに火がついた。Kai さんのスペクトルを見ると、1本のスペクトルが4枚の画像にわたって写っていた。そこで、回折格子の格子定数が気になったので、質問してみたところ、200本/mmだと教えて頂き、もっと小さい分散でも良いかも的なコメントも頂いた。

使用した回折格子について

 実は仕事柄、回折格子はイベントで使ったりするので、手持ちで透過型の回折格子を持っていたのだが、500本/mmと分散が大きかった。Seestar の焦点距離やCMOSチップの大きさを考慮すると、これでは使い勝手が悪い。試しに500本/mmでシリウスのスペクトルを撮ろうと思ったが、 0次光からいったいどのくらい離れた場所に1次の回折光が現れるのかが皆目わからず撃沈。そこで、先の Kai さんのコメントに従い、100本/mmの回折格子を探したのだが、国内では気軽に(安価に)手に入りそうになかった。

 それで色々ネット検索していたら ebay で100本/mmの回折格子が売られていることを知る。お買い物サイトとしての安全性など色々悩んだが、一念発起して人柱になるべくエイヤっ!と ebay で約3.8cm四方の回折格子を買うことにした。このとき、さらに分散の小さな50本/mmもあったので、試しに購入(結果的にこれが良い選択だった)。50本/mm, 100本/mmともに、1枚約11ドルで送料は無料(計約22ドル)。12月20日に注文して自宅に届いたのは1月3日だったので、思ったよりも早い到着だった。

50本/mmで試しに撮ってみた

ebayで購入した50本/mmの回折格子をSeestar に取付けた様子 (この方法はおススメしないので、後述する方法を参照されたし).

 ブツが届いた1月3日の晩に、早速回折格子 (50本/mm) をSeestar に装着し、観測を試みた。約3.8cm四方のフィルムなので、はじめは上記のように、適当な厚紙を丸くくり抜き、口径を絞る形で装着(セロテープで止めただけ)。貼り付けるさいは、1次の回折光が縦方向に出現するように注意した(Seestar の観測画像は縦長なので)。

対物レンズ全面に回折格子を取り付けた状態で撮影 (リゲルをプレビューしている様子).
左図の状態から視野を一つぶんずらした位置に出現しているリゲルのスペクトル (1次の回折光).

 上記の画像(上記左図)は、とりあえず導入したリゲルの姿。回折格子の影響を受けてか、合焦状態にも関わらず、星像の劣化が見受けれた。その影響で、プレートソルブもうまくいかず、導入時は回折格子を外して行うことになり、導入からスペクトルの撮影までの効率は決して良くなかった。一方で、 50本/mmの回折格子だと、1次の回折光がちょうど画像内に収まっており(上記右図)、複数の画像にスペクトルがまたがらないのは良い。しかし、星像の劣化が影響して、スペクトルの撮影を開始してもスタックがまったくうまくいかず(ひたすらエラー)、1枚も画像をFITSで保存することができなかったorz 例えばシリウスのスペクトルにしても、撮影をはじめるライブビュー状態から吸収線の存在がわかり、期待が膨らんだが… 結局のところスタックエラーで画像(FITS)が1枚も保存されないのは、非常にもどかしい時間であった。
※なお後述する方法で観測すれば、導入効率のアップ、スタックエラーの回避が可能である。

 ちなみに、50本/mmの回折格子を使うと、1次の回折光がどこに現れるのか?これについては(回折格子の貼り付け方にもよるが)、おおよそ Seestar の視野を一つ分ずらしたところに出現していた。Seestarアプリの星図(右図)で確認すると、シリウスの場合、赤い枠のあたりにスペクトルが写っていた。もちろん、1次の回折光はこれとは逆方向にも出現するので、どちらか観測しやすいほうのスペクトルを撮ると良いだろう(スリットレス分光なので、撮影領域によっては、スペクトルが出現した位置に、他の星がコンタミしてくることも十分考えられるので)。

 先に述べておくと、100本/mmも試したところ、スペクトルは Seestar の視野を2つほどずらした位置に出現した。当然1本のスペクトルは2~3倍ほど長く出現し、撮影するときも2~3枚の画像にわたることがわかった。どんぶり勘定してみると、最初私が使おうとしていた500本/mmだと、1次の回折光は視野を10個ほどずらしたところに出現していたのかもしれない(しかも1本のスペクトルは超ロングになり、視野をずらしつつ10枚くらい撮らないと1本のスペクトルにならなかったのかも)。

50本/mmの回折格子を使った場合、スペクトル(1次の回折光)が出現する位置について.

 ところで先ほど、スタックエラーでスペクトルがまったく撮れない(FITSで保存されない)ということを書いた。シリウスやリゲルなど、このとき明るい恒星のスペクトルは全然撮れなかったのだが、少し星の多い領域でスペクトルを撮ってみると、奇跡的にいくつかスタックがうまくいき、FITSで保存できたものがある(以下に2例示す)。

50本/mmで撮影したゴメイサ (こいぬ座β星)のスペクトル. 観測日時は画像内に記載.
50本/mmで撮影したM42のスペクトル. 観測日時は画像内に記載.

 この2本のスペクトルについては、正直たまたまスタックされて、「なんかまぐれで撮れちゃった」的なショットであった。画像を見てわかる通り、回折格子の影響を受けて、やはり星像が悪く(ピンボケではない)、これがどうしてもプレートソルブやライブスタックに影響を与えてしまう。このままでは観測の効率が非常に悪く、何より任意の天体のスペクトルがFITSで撮れないのは大問題であった。
※このとき M42 はしっかりとHαと [O III] の輝線が写っているのがわかった。

問題解決!回折格子の取り付け方を工夫せよ

Seestarの対物レンズに対し、回折格子をおよそ半分だけ被せて装着した様子. 装着は簡易的にセロテープにて.

 さて、まるで日記のように書くから、どんどん記事が長くなっているが、先の大問題は回折格子の取り付け方を工夫したことで、一発解決をみた。工夫といっても簡単なことで、上記の写真のように、回折格子を対物レンズに対して半分くらいだけ被せる、というだけである。こうすることで星像の劣化がかなり緩和され、回折格子を取りつけた状態であってもプレートソルブは軽快に動き、ライブスタックについても時々エラーが出る程度になった。たったこれだけのことで、観測効率の劇的な改善ができた(2024年1月24日より)。右図にこの手法で撮ったリゲルのスペクトルを示しておく。先に紹介したリゲルのスペクトル画像に写っていた星と比べると、星像が大きく改善していることがわかるだろう。

 とは言っても、完全に改善したわけではなく、明るい星を撮ると、まだゴーストのようなものが発生しているのがわかる(下図参照)。スリットレスの場合、このいびつな(面積をもった)星像は、波長分解能にも少し影響を与えるかもしれない。

50本/mmで撮影したリゲルのスペクトル. 回折格子の取り付け方を工夫して撮った一例.
合焦状態で対物レンズに回折格子を全て被せたとき(左)、半分だけ被せたとき(右)の星像の比較. 写っている星はリゲル.

Seestarで冬の1等星のスペクトル全部撮ってみた

50本/mmの回折格子を用い Seestar S50 で撮影した冬の1等星のスペクトル.

 上に冬の1等星7つのスペクトル画像を示す。スペクトルはトリミングをかけているが、画像の縮尺は統一してある。本当なら横方向に波長で整列させたいところだが、今回は超大雑把に目分量で配置している。一応、上から温度の高い順に並べている。スタック枚数や撮影日については画像内に記載した。

 50本/mm という低分散であっても、さすがシリウス (A型星) はバルマー線 (吸収線) の存在が何本も目視でよくわかった。さらにM型のベテルギウスも、低温度星らしい TiO の吸収帯がバシバシ写っていることが目視でわかる。なお、ポルックスのスペクトルが薄いのは、観測したとき、月が近くにあったことが原因となる。それから、何本か1本のスペクトルがトレーリングしたように太く写っているのは、追尾エラーや視野回転等の影響を受けての、スタックミスが原因だと考えられる。

 それで、一応これらのスペクトルを全部マカリィでカウント値を読み出し、既知の吸収線を使って波長校正を行い、グラフ化までしてみたので、以下に示しておく。なお既知の吸収線が2本以上はっきりしないものは、シリウスの波長校正データを使ってグラフ化した(例えばHβなど一つだけでも既知の吸収線がわかれば、それめがけてオフセットするように校正)。縦軸は相対強度とし、マカリィで読みだしたカウント値そのものである(強度校正や規格化はしていない)。

リゲルのスペクトル
シリウスのスペクトル
プロキオンのスペクトル
カペラのスペクトル
ポルックスのスペクトル
アルデバランのスペクトル
ベテルギウスのスペクトル

 あまり吸収線の同定(書き込み)ができていないが、また外部で発表したり執筆することがあれば、もう少しまじめにやりたいと思う。ただリゲルみたいに(高温の星になると)、ほとんど吸収線がわからないケースもある。それにしてもベテルギウスは TiO の吸収帯が何本もよくわかり、こちらは楽しいかぎり。何等まで分光できるのか、そこは更なる検証が必要だが、明るい輝線星を狙うのも一興だろう。

100本/mmでも撮ってみた

Seestar に 100本/mm の回折格子を装着して撮ったシリウスのスペクトル.

 先にも述べたとおり、今回 ebay では 100本/mmの回折格子も購入した。せっかくなので、シリウスのスペクトルを撮ってみた。さすがに1枚の画像にスペクトルが収まらず、テスト観測では3枚の画像に渡って撮影した。ただ頑張れば、ぎりぎり2枚の画像で収まるかもしれない。一応、グラフ化までやってみたが、50本/mmと劇的な違いは見受けられなかった。100本/mmだと、単純に観測時間もデータ処理も2~3倍の時間&労力になるので、Seestar で気軽にスペクトルを撮りたい人は、1発で1本のスペクトルが撮れる50本/mmがオススメである。

データ処理について

 本記事の最後のネタとして、データ処理に関して(簡単に)述べておく。一応、普及面も意識して、全てマカリィとエクセルで処理したので、ソフト面でのハードルは低いだろう。処理フローとしては以下のとおり:

  1. マカリィでスタック済みのFITS画像を開く(読み込み方法はカラー画像を選択)。
  2. 画像が縦向きなので、短波長側が左になるように画像を横向きに回転。
  3. マカリィの “グラフ” 機能を使って、スペクトルの強度(カウント値)を読みだす。
  4. 読みだした数値を “テキスト出力” する (.csv で保存できる)。
  5. CSVファイルをエクセルで開いて、既知の吸収線で波長校正。
  6. エクセルでグラフ化。

 文字だけではわかりにくそうな部分もあると思うので、以下補足用の画像を2枚だけ以下に貼っておく。

【上記フロー3番】マカリィの “グラフ” 機能を使って、スペクトルの強度(カウント値)を読みだしているところ.
【上記フロー5番】CSVファイルをエクセルで開いて、既知の吸収線を使って、波長校正をしているところ.

さいごに

 おまけの部分が記事の大半をしめてしまったが、冒頭でも述べたとおり、今回の検証で私が最も知りたかったのは “Seestar S50 のカラー画像の分光感度特性” となる。これについては、まとめも含めて記事の前半部に示した。その副産物として、Seestar S50 を使ったスリットレス方式(透過型回折格子)での分光観測に関して、一定のノウハウを得ることができた。

 なお、星見屋さんから依頼頂いていた 「Seestar S50 を使った測光観測の検証」というのは、一旦これで一つの区切りになっただろうか。測光に必要そうな検証はある程度やったとすると、次なるステップは「普及」である。Seestar S50 を使った科学的な観測を普及させるには、当然マニュアル整備も必要だが、大雑把に「やってみよう」ではなく、何か一つの目標(キャンペーン)をアドバルーンとして上げることも考えたいところである (例: 某回帰新星のモニターなど)。スマート望遠鏡を使った市民科学の創出、そのような野望を最後に匂わせつつ、本稿を締めくくることにしよう。


これまでの関連記事は以下のとおり:

  1. SeeStar S50 を使った測光観測の検証
  2. SeeStar S50 を使った食変光星の測光観測
  3. SeeStar S50 を使った新天体の確認観測
  4. 天体リストに無い天体の導入 (Seestar S50)
  5. デフォーカス画像を用いた明るい星の測光 (Seestar S50)
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ZWO PE200 ハーフピラーを購入 (+注意点)

図1: ZWOのハーフピラーPE200を装着した様子.

 ZWOのAM5 赤道儀を運用するさい、私は手持ちの sky-watcher の EQ6R-pro に付属していた三脚を用いています (参考: レビュー記事)。これまで、ほとんど大きな問題を感じていなかったのですが、最近タカハシのミューロン210を載せたとき、ガイド鏡 (Svbony の6cm) をAM5のアリミゾ横に同架させました。この組み合わせで撮影中、子午線の反転が入ったとき、ガイド鏡が三脚と衝突する事故が発生しました。幸い大事には至らなかったのですが、AM5はコンパクトな赤道儀がゆえに、予期せぬ事故に気をつけねばならない、という思いが強くなりました。

 そこで、ハーフピラー (ZWO PE200) の購入に踏み切りました。某所でセールだったとはいえ約2.5万円もする代物ですが、品質は良さそうで満足しています。もし安くあげたい場合は(EQ6 の三脚で運用している方なら)、sky-watcher のハーフピラーという選択もあります。なお、PE200 については、あまりネット上に情報も無いので、簡単なレビュー (+ 注意点) を記事にしておこうと思います。

図2: ZWO ハーフピラー PE200 本体と付属品.

 PE200を開封すると、本体のハーフピラーに加え、M6のネジ2本と六角レンチ、そして sky-watcher 製又はセレストロンAVX三脚に接続するための交換アダプターが付属している。ピラーとAM5の接続は、上部3ヶ所のネジを回して頑丈に締め付けられるようになっています。ピラー内部に突出するストッパーはネジを回すとヌルヌル動いて、なんだか高級感があります。

 ちなみに購入前は、おお~、sky-watcher 用のアダプターも付属しているんだ!素晴らしい!と思ったのですが、後述する通り、これにはちょっとした注意点があります。

図3: PE200の底面とアダプター部.
図4: アダプターを sky-watcher 用に換装した様子.

 ピラーの裏側には写真(図3)のようなアダプターがついています。付属の簡易マニュアルに従えば、sky-watcher の三脚に載せたいならアダプターを交換しろ、と書いてありました。それで、何も考えずに図4のように交換しました(このとき、まだアホなことをしていることに気が付いていない・・・)。

図5: AM5 の底部のアダプターをCOSMO工房製からPE200用に換装.

 お次はAM5側のアダプターを交換します。私はこれまで、 COSMO工房さんに作ってもらったAM5を EQ6 の三脚に載せるためのアダプターを常時装着していました。これを取り外し、図3のアダプターをAM5に装着します。これで、ハーフピラーPE200にAM5が載るようになります。

 よし!ではハーフピラーをEQ6の三脚に載せようと思ったら、あれ・・・?絶対におかしい。ちゃんと載らないし、ネジの大きさも違うぞ・・・。

図6: EQ6用三脚トップ (2インチ型) とPE200付属のsky-watcher用アダプター (1.75インチ型三脚用).
図7: 【左】COSMO工房製EQ6-AM5接続アダプター. 【右】PE200付属sky-watcher用アダプター.

 それもそのはずです。図6のように、まずEQ6の三脚の受け皿と、PE200に付属しているsky-wathcer 用のアダプターの形状や大きさが明らかに異なります。そして、図7のように、これまで使ってきたCOSMO工房さんのアダプターのネジ穴はM12、PE200の付属アダプターは3/8インチネジではありませんか(M10ではないよね?)。ガーン!これは一体全体どういうことだー!と調べたところ… ZWO の公式ページには以下のような説明が:

Not only suitable for the ZWO carbon fiber tripod, also can be used with 1.75-inch steel tripod from iOptron and Sky-watcher, and with the 2-inch tripod for Celestron Advanced VX mount.

ZWO PE200 公式販売ページ

 えっ、スカイウォッチャーは1.75インチ三脚ですと???なんやそれー?!

 早速、調べてみると、同社の1.75インチ三脚というのは、EQ5などに使われている三脚らしのだ(参考ページ)。この三脚の販売ページ画像をよく見ると、PE200の付属アダプターがスポっとはまりそうな大きさ&形をしているではありませんか。さらに調べてみると、EQ6用の三脚は2インチ型らしく、実は赤道儀と三脚の接続規格が異なることがわかりましたorz ちなみに、この1.75インチと2インチという数字は三脚の脚の太さ、つまり直径を表している。あとセレストロンのAVX用の2インチ三脚は公式の説明のとおり、PE200の付属アダプターが画像を見る限り使えそうです(参考ページ)。

図8: COSMO工房製EQ6用アダプターに交換した様子.

 というわけで、COSMO工房さんのアダプターをPE200の底面に換装(図8)。これでEQ6の三脚に、無事に装着することができました (冒頭図1)。ふぅ、めでたしめでたし (^^/

 いや、ちょっと待って~!!日本の代理店の皆様。大きなお世話かもしれないのですが、PE200の販売ページ、ちょっと見直したほうが良い気もします。例えば以下のように、

AM5赤道儀を SkyWatcher製三脚に搭載する事が可能になります。(※ SkyWatcher三脚用取付アダプターが附属します。)

国内の多くの代理店さんにおいて(いずれも公私ともにお世話になったことがある優良なお店なので名指しはしません)、上記のような日本語の補足説明が販売ページでなされています (2023年12月29日時点)。私はこれを見て勝手に「おお、EQ6 の三脚にも装着できるやん~。せっかくCOSMO工房さんにアダプター作ってもらったのに、今使ってるアダプター遊んでまうなー。」と思ってしまったほどです(いや、テメェの下調べが甘いからだ!というお叱りを受けるかもですね ^^;)。ちなみに、iOptron の三脚については、

AM5赤道儀を ioptron製 1.75″三脚(CEM40/GEM45用三脚)に搭載する事が可能になります。(※ ioptron製三脚用固定ネジ(M6x2)が附属します。)

という感じで、細かな補足説明になっています。従いまして、sky-watcher の三脚についても、EQ5とかの1.75インチ型にしか対応してないよ、EQ6 の2インチ三脚には非対応だよん、と一言あると親切かな~と思いました。以上、ZWO の純正ハーフピラーPE200について、Sky-watcher の EQ6 用三脚で運用することを考えている人の参考になれば幸いなり。

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こぐま座流星群の火球 (ATOM Cam2)

こぐま座流星群に属すると思われる火球 (動画データより比較明合成).

 2023年12月23日1時38分頃、ATOM Cam2 の標準アプリで火球を検出しました。観測地は徳島県阿南市で、カメラは北向き。きりん座のあたりから流れ、途中でカッと劇的に明るくなりました。流星痕も数秒にわたって写っています。

 ちょうど、こぐま座流星群の極大夜にあたり、軌跡を辿ると放射点付近にいきつくので、流星群に属する火球かと思われます。以下のとおり、動画データは YouTube にアップしております。

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