Atom Cam2 を用いた流星撮影

2021年7月頃に購入した Atom Cam2 と付属品.

はじめに

 Atom Cam2 というカメラはアトムテック株式会社が販売しているネットワークカメラです。防水・防塵(IP67)が謳われており、屋内のみならず屋外での使用も想定されています。無線のネットワーク環境スマホがあれば、手軽に(防犯や監視カメラなどとして)運用開始できます。私が2021年7月に購入したときは、本体価格 2980 円 (税抜き)、送料 850 円、という感じで、合計 3830 円で買えました。2022年10月時点は、本体価格が税込み 3480 円となっており、少々値上がりしているようです。

 カメラの基本スペックなどは、販売元のホームページに書いてあるので詳細はそちらを参照されたい(以下、かいつまんでカメラの紹介)。解像度は動画も静止画も 1920 × 1080 (1080P) で撮ることができます。画角は約120°あるらしく、通常の防犯や監視目的としては、十分なスペックでしょうか。記録メディアは MicroSD カードとなっており、公式では最大 32GB まで使えます(なお私は推奨されていない128GBを差して運用している)。電源は5V, 1A あれば動作し、付属のケーブルは本体側が Micro USB typeB, ACアダプタ側が USB typeA になっています。Micro typeB 側の差込口は防水的な処理が施されており、 挿し込むときはシリコン系の抵抗感があります。しかしながら、ACアダプタ側は TypeA の差込口も含め、特に防水処理が無いので、屋外で運用する場合は雨天時の対策・工夫がいります。あと、カメラの台座はそこそこ強力な磁石になっており、壁面に取り付けることも可能です。磁石がひっつかない素材であっても、円形の金属板 (+ 両面テープ) が付属しており、これを好きなところに貼れば設置場所を選ばないです(屋外の場合、問題になるのは電源ケーブルの取り回しではないだろうか)。

 さて、今回紹介するのは、この AtomCam2 を使った我流の流星撮影について。本来このカメラの使用目的とは逸脱した(+ 過酷な)使い方なので、あくまで参考事例としてお考え頂きたい。そのためか、私の場合1台目のカメラは1年も経たずに壊れています。真似をしてカメラが壊れたとしても、責任は負いかねるので、予めご了承頂きたい。

カメラの設置(と雨対策)

自宅の南側窓(シャッター)に設置したAtom Cam2. 軒が小さいので、強い雨が降るときは電源もカメラも退避させている.
シャッターに磁石で張りつくAtom Cam2. 風の強い日でも頑張って引っついている。エビぞり状態なので、アプリで映像を反転させる必要がある.

 最初カメラの設置については、かなり悩んだが、現状自宅の窓にあるシャッターを下ろし、そこに磁石パワーを使って張り付けています。カメラが向いている方位はほぼ南。雨の日はなるべく屋内に退避させているが、にわか雨にやれることもしばしばあり、軒が小さいので、強い雨だとかなり水をかぶっていることがありました。

レンズカバー内部の結露. 強い雨によって、機器内部への浸水があったものと考えられる.
浸水しそうな前面パネル部を住宅用の気密テープで保護した様子. (これは逝ってしまった1代目. レンズカバーが無いのは分解して遊んでいたため.)

 2022年5月27日には強い雨に何回か打たれたせいか、レンズ保護カバーの内部が結露するようになってしまいました。私の場合、何度かカメラ用のドライボックスに1~2日間ほど放置し、結露がマシになったが、一度浸水すると完全には治らず。そもそも、これは監視カメラなので、空に向けて(イナバウアー状態で)使うことは、想定されていないでしょう。そのため、防水カメラとはいえ、前面パネルから (?) の浸水を許してしまったのかもしれません。そこで、カメラの前面には住宅用の気密テープを使って、防水を強化してみる対策を施している。効果のほどはまだわからないが、何もしないよりかはマシでしょうか(強い雨の日はなるべく屋内退避が望ましいとは思う)。

ところで、1代目のカメラは2022年6月末には逝ってしまった。症状としてはSD カードをまったく認識しなくなったのです。非推奨の128 GB を使っていたこともあり、新品の 32GB に差し替えてが時すでに遅し。しまいには電源のオンオフもできなくなり、あえなくご臨終と判断。何が原因かはわからないが、浸水に加え、もしかすると日中の暑さや直射日光が原因だったのかもしれません。暑い時期は日中の屋内退避も、カメラの寿命を延ばす秘訣といったところでしょうか。なお、同年10月頃から2代目の運用を開始しています。

観測時の設定

 Atom Cam2 にはナイトビジョンモードという設定があます。ようはカラーからモノクロ撮影に切り替え、相対的に感度を上げているようです。であれば、流星を狙うのだし、モノクロで撮ったほうが吉とも思えます。しかし私の場合、一番の目的は「火球」の記録。仕事の関係で時々、近隣で火球の目撃情報が話題になると、地元メディアから問い合わせがあるのだ。このとき、オリジナルの資料があればなぁと思うことが何回かあったので、「火球」専用と割り切れば、メディアにウケるカラーでも良いかと思っています。そのため、ナイトビジョンについてはオフで運用しています。その他、私の場合の撮影設定をスクショでご紹介:

検出設定について
録画のストレージについて
その他の設定

 モーションタグ(自動検出時の緑の四角い枠)は、最初面白いからオンにしていましたが、実際に火球がヒットすると、比較明合成時に邪魔になるので、オフにしています。あと録音については悩みましたが、今のところオフにしています。ちなみに、GitHub に公開されている atomcam tools などを試したこともあるのですが、これは色々とハッピーになれそうなのに・・・ 何故か私の環境下ではうまく動作した試しがないので、今は諦めていますorz

火球クラスの検出成果

 標準アプリでの自動動体検出ですが、いくつか成功例があります。やはり「火球」と割り切れば、ノーマル状態でもぼちぼち成果が出せました。以下、自動検出が働いた例をご紹介:

火球監視の運用から約1ヶ月半後くらいに (2021年8月30日03:02頃 JST)、初めてゲットした長経路の火球. このときはまだモノクロで運用していたが (且つモーションタグもオンにっている)、同僚からカラーでも写ったのでは?と言われ、その後カラー運用に切り替えた.
2021年11月10日23:16頃 (JST) に検出した大火球. 残念ながら私は寝ていたが、たまたま目撃した同僚によると、自分の影ができるほど何回も閃光があり、凄まじい火球だったとのこと. 各地で新聞・テレビでも報じられ (私も地元新聞社に載った)、YouTube 上にも同じ火球の動画が多数 UP されている.
2022年1月14日20:44頃 (JST) に検出した火球. 画面のかなり端っこだが、一応自動検出が働いていた.
2022年1月25日05:39頃 (JST) に検出した火球. これも一応、自動検出が働いていた.

 さて、ここまでが自動検出が働いて、ゲットした火球クラスの流星たちでした。一方で、そこそこ目立つ火球 (流星) じゃん!と思えるのに、自動検出が働いていなかったケースもありますので、以下ご紹介:

2022年3月29日23:06頃 (JST) に出現した火球.
2022年6月9日02:42頃 (JST) に出現した流星. なぜか日付・時計の表示がオフになっていた.

流星群での運用

 2021年のふたご座流星群と、2022年のしぶんぎ座流星群で運用しました。ふたご群に関しては12/12~12/14の晩に計3夜にわたって観測。中には自動検出が働く火球もあり、寝床でスマホからライブ映像を見ていると、ピュンピュン流星が飛んでいる様子がわかりました。ただ、3夜分の動画データを全部「目視」で確認するのは骨が折れるため、長らくデータは塩漬け状態になりました(しぶんぎ群も含め)。

 一方で、Atom Cam2 を使った流星観測は、全国的にもユーザーが増え始め、やはり流星の検出を「楽して」やりたいという声の高まりがどこからともなく聞こえてきました (主に SNS)。そんな中、大変ありがたいことに GitHub に meteor-detect という Atom Cam 用の流星の自動検出コードを Python で作って公開されている方がおられ、私もこれのお世話になることに。さらに鈴木文二さんからご提供頂いたマニュアルや pirosap.tech という blog で紹介されている使い方を読ませて頂き、(私のようなナンチャッテ R 使いでも) 何とかプログラムを動かすことができました。有益な情報に感謝でございます。

 このプログラムはリアルタイムでの検出も可能らしいのですが(私はまだ試してない)、自分にとって最高に嬉しかったのは、撮影後のデータに対しても自動検出を走らせることができる点でした(数年前からパナソニックの GH5S で流星の動画撮影をしているときから、ずっとそういうソフトが無いか探していた)。

【左】コマンドプロンプトで meteor-detect を走らせている様子. 【右】GitHub で公開されている meteor-detect のページ.

 meteor-detect を使うと、ふたご群もしぶんぎ群もザックザックと流星が検出されました。このプログラムは流星を検出すると、動画の切り出しに加え、比較明合成された静止画を吐き出してくれます。流星の出現時間や軌跡が長いと2つのファイルに分かれることもありますが(途中で途切れていることもある)、目視でサルベージすることを考えれば、圧倒的に効率が高く、多くの人がハッピーになれるプログラムです。

meteor-detect で検出&比較明合成された流星の例 (Atom Cam2 側の動体検知は働いていなかった).

 ふたご群について、meteor-detect でサルベージされたデータを使って、1時間おきに比較明合成してみたのを以下に UP (散在も混じっているので注意)。1時間おきだと、放射点の移動(日周運動)が比較的少ないので、流星群感が出ます。あと、しぶんぎ群については、検出数が多くないので、ピーク夜の画像をひとまとめに合成しました:

ふたご座流星群 (2021年12月13日と14日の晩)

ふたご座流星群 (2021-12-13, 23h~24h)
ふたご座流星群 (2021-12-13, 24h~25h)
ふたご座流星群 (2021-12-13, 25h~26h)
ふたご座流星群 (2021-12-13, 26h~27h)
ふたご座流星群 (2021-12-13, 27h~28h)
ふたご座流星群 (2021-12-13, 28h~29h)
ふたご座流星群 (2021-12-13, 29h~30h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 22h~23h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 23h~24h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 24h~25h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 25h~26h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 26h~27h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 27h~28h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 28h~29h)
ふたご座流星群 (2021-12-14, 29h~30h)
おまけ
(12月13日の晩の画像を全部比較明合成)

しぶんぎ座流星群 (2022年1月3日の晩)

しぶんぎ座流星群 (1月3日の晩の画像を全部比較明合成)

 ちなみに、サルベージされた動画データについては、そのうちまとめて、YouTube に UP したいと思っています。UP したら、この記事に追記します。

何等まで写るのか?

 ところで、Atom Cam2 は何等星まで写っているのだろうか?ステナビと見比べながら、大雑把に月の無い透明度の良さそうな日のデータをあさってみた。

カラー撮影の映像をスクリーンショットした画像(blog 用に少し明るさ調整している)。星名に続けてカッコ書きで記した数字は等級。ただし変光星図によくあるように、小数点を省略する形で表記。
モノクロ撮影(ナイトビジョンオン)の映像をスクリーンショットした画像(無加工)。星名に続けてカッコ書きで記した数字は等級。ただし変光星図によくあるように、小数点を省略する形で表記。

 あくまでザッと見た感じでは、カラーモードで約4等台。モノクロモードだと約5等台という印象です。モノクロモードだと1等ぐらい暗い星が写っていそうで、薄っすらと夏の天の川も写る。ただし、比較している映像が季節が真逆の夏と冬なので、突っ込みどころがあると思いますが、ご容赦ください。

さいごに

 Atom Cam2 を使った夜空の監視。はじめは火球の監視ができればと、割り切って運用していましたが、meteor-detect の登場で、流星群のみならず、日々の流星検出にもとても威力を発揮してくれるようになりました (プログラムの製作者に大感謝)。ただ私の場合、meteor-detect の運用は撮影後にまとめて実施するスタイルなので、どうしても1時間おきに手動でプログラムを走らせています。これが自動化できれば(例えばサルベージ期間の指定)、さらに効率的に、流星のサルベージができそうです。

 なお、先に紹介した pirosap.tech という blog では “PCとATOM Cam 2で流星検出 (期間指定)” という方法も紹介されており、Windows であれば、power shell を駆使すれば、ハッピーになれそうな感じなのです。おお、これは素晴らしい情報!とてもありがたい!と思って飛びついたのですが・・・ な、何故か私の環境下では、これがうまく動かず・・・ もう少し PC のお勉強が必要そうです。

 今後、日々検出された流星については、blog に記録を残すか、あるいは YouTube にアップしていきます。2022年のふたご座流星群も迫ってきましたし、AtomCam2 を使った流星観測、引き続き楽しめそうです☆

カテゴリー: AtomCam2, 天文教育・普及, 流星, 観測機材 タグ: , , パーマリンク

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