小惑星2001 CC21 による恒星食の観測

観測キャンペーンが行われている小惑星 2001 CC21 による恒星食の観測について、簡単にレポートを書き残す (ただの日記です。あまり科学的な話は無いのであしからず)。

なお、筆者は小惑星による恒星食の観測について、過去1回しか行ったことがない(この種の観測はヒヨッ子レベルであることを先に断っておく)。その過去1回とは、ふたご座流星群の母天体ファエトンによる恒星食 (2021年10月)である。これについては、いくらかネット記事があるので、代表的なものを以下にまとめておく。

ふたご群の母天体ファエトンによる恒星食、観測大成功!(AstroArts)
小惑星Phaethonによる恒星の掩蔽観測に成功 (惑星探査研究センター/研究員ブログ)
集合場所は「小惑星の影」で (COSMOS/ISAS・JAXA)

さて、今回の 2001 CC21 という小惑星は、日本の探査機はやぶさ2(拡張ミッション)の目標天体らしく、JAXAのホームページにもキャンペーンの概要が公開されている。なぜ、恒星食を観測するのか、ここではその科学的な目的は割愛するが、私自身、ファエトンの観測を通じて単純に「恒星食の観測、おもしろいな」と強く感じていたので、今回のキャンペーンにも参加してみることにした次第(ありがたいことに、ファエトンの観測を一緒に行った研究者のUさんや、キャンペーンの音頭をとっているHさんから、直接お声掛けも頂いた)。

キャンペーンでは、徳島(四国)から観測できそうな機会が2回ほどありそうだった。予報によると、2023年2月6日と3月5日。もし出陣するとなると、2月分は徳島県鳴門市(大毛島)、3月分は高知県東洋町のあたり。本番までにgoogleアースとストリートビューを飽きるほど見て、観測場所を選定。2月に関しては事前に、日中に下見を行ったりもした。

2月6日分の観測予定地@鳴門市大毛島内. 北向きの空を撮影. 奥には鳴門大橋も見えていた.

しかしながら、2月6日については、数日前の天気予報がかなり怪しい雲行きで、当日にいたっては完全に曇天。徳島での観測は成立しませんでした(他の地域に布陣されていた方々も悪天候につき不成立だったようです)。

そして、きたる3月5日。実はこの日、私は仕事で終日天文系のイベントがあり、現場責任者として働かなければなりませんでした。さらに、高知県東洋町にまで行かないといけないので、家族との折り合いや、当日の出発準備と移動時間を考えると… うーん、保留かな。と、思っていました。しかし、幾人の方々から、「3月5日観測しないの?」というお声掛けを頂き、一念発起して出陣を決意。家族 (妻) の寛大な理解を得て、5日夕方に出発しました。嬉しいことに、しかも予報は快晴でした!

自家用車 (マツダ フレア) に積み込まれた機材ども. 左の箱に望遠鏡、右の箱に赤道儀が入っている. 三脚は後部座席の足もと. 助手席には PC など小物類. 軽自動車だと全席つぶさないと載らない!徳島に来てから、県南によく遠征撮影にいくので、機材のパッキングはある程度慣れています.

ちなみに、持って行った主な機材は以下のとおり:

  • MEADE 25.4cm (F6.3) / シュミットカセグレン
  • Sky-Watcher EQ6R pro (赤道儀) + WiFi モジュール
  • 三脚 (赤道儀付属品)
  • ZWO ASI290MM (メインカメラ)
  • QHY PoleMaster
  • VK-172 (GPS受信機) + USB延長ケーブル
  • ポータブルバッテリー×2 (1つは予備)
  • ノートパソコン
  • Android タブレット (SkySafari用/自動導入)

まったくどうでも良い話ですが、旅の途中、腹ごしらえも。阿南市南部・橘町という港町にある「かまたまーる」といううどん屋さん。個人的には市内で一番好きかもしれないうどん屋です。観測のためのエネルギー充填として、釜揚げうどん大、とり天を注文。美味い!他にもカレーうどんがオススメですし、ちょっと奇をてらうならチーズ釜玉うどんもオススメ。まぁ、旅といっても、私の場合は車で片道1時間40分くらい。他の布陣場所ではもっと大移動している方もいると思うので、恒星食観測の分野ではライトな移動なのかもしれません。

さて、現地には20時頃到着。道中、高知に行くほど雲がいそうな雰囲気だったので、内心ヤバイかもしれないと思っていました。案の定、到着したときは、月もわからぬほどに雲がorz 機材を出す気すらおきないほどでしたが、GPV を見てみると、21時に向けて少し雲がとれそうな予報が出ていたので、テンションが上がらないけど、とりあえず半分ほど機材を組み上げたのでした。

すると、予報どおり21時くらいから雲がなくなり快晴に一変!やったぞー!急いで残りの機材を組み上げ、極軸をあわせ、目的星を導入。恥ずかしながら、実は今回、目的星の導入がぶっつけ本番でしたが、変光星関係で慣れていることもあり、ファインディングチャートとの睨めっこ(目的星の同定)は、難なくクリア。しかし途中、自動導入(無線通信)に使っているタブレットがフリーズして、再アライメントが発生して往生しました。あと、撮像ソフト Sharp Capture を普段使っていないので、ソフトの設定を思い出すのに少し手間取りましたので、やはり一発勝負みたいな観測は事前の練習をちゃんとやっておかないといけませんね(大反省)。そういえば、ファエトンの観測のときは、自宅の庭で事前に2~3回は練習をしてました (^^;

観測時の観測機材と私. 2023年3月5日、高知県東洋町某所にて.

そうこうしてるうちに、目標時刻 (21:46分頃) が迫ってきて、やべー!まだ GPS の同期してないやん!VK-172 をブスっと PC にさせたのが、なんと4~5分前。綱渡りな状況で、とりあえずASI290MMの録画ボタンを押し、VK-172 の発光信号を記録。目標時刻の前後1分程度(計約2分間)は、PC の画面を凝視し続けました。今回の食は0.1秒しかないとのことだったので、ちょっとでも余所見をすると見逃すレベル。しかし観測中、減光らしき現象は見えませんでした(翌日行った測光でも明瞭な減光は見られませんでした)。

Limovie による測光結果 (2023/03/05). 目的星 TYC 4082-763-1 (約10等). ビデオの露出時間30ミリ秒、ゲイン500にて.

今回、私の布陣した場所では、恒星食による減光は検出されませんでしたが、帰り道、道の駅に寄ったときに、念のためメールをチェックしてみたら… 他の観測地点において、「0.1秒消えました!」との速報が流れているではありませんか!!ええー!すごい。ほんまに減光してるところ、あるやん!と、ひとり車中でテンションが爆上がり。というのも、今回の恒星食は予報じたいの誤差が大きく、予報帯のどこで減光するかわからない、というレベルでした。もちろん、自分の観測で減光していたら有頂天だったとは思いますが、他の地域(計18ヶ所)の人たちと、連携・協力しながら観測布陣がしかれ、多くの「減光無し」があったからこそ、浮き出てきた成果(大成功)であることは間違いありません。

原理はよくわかっていませんが、今回3月5日のキャンペーン観測によって得られた「減光」データから、今後、小惑星 2001 CC21 の軌道要素が劇的に改善するらしいです。それによって、掩蔽帯の予報精度も大幅に向上するらしく、次の恒星食では多くの観測者が減光を検出できるようになるようです。キャンペーンの HP によれば、次回3月26日が最大の山場になりそうですね。場所は九州南部(鹿児島方面)なので、私は馳せ参じることができませんが、次回の観測成功 (+ 晴天) を、ここに祈願したいと思います☆

観測された皆さん、本当にお疲れ様でございました。

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