Dwarf3 を用いた測光観測の検証 (2)

 今年3月頃にスマート望遠鏡 Dwarf3 を用いた測光観測に関するテスト記事を書きました (前回の記事はこちら)。Dwarf3 は望遠と広角の撮影ができる2眼式なのですが、今回の記事は広角側のテスト結果になります。※本件は星見屋さんの依頼で実施しておりますが、報酬の授受は一切ありません。

Dwar3 の広角側で撮影したかんむり座 (CrB) 付近の画像 (約47.5°×26.3°). 画像はGプレーン. 2025年4月27日1時20分頃撮影. 2秒露光17枚スタック. 経緯台モードで撮影.

 Dwarf3 の広角側は、撮影した画像を FITS で保存することができる。ダークやフラットについても適切に取得すれば、撮影(ライブスタック)時に内部処理してくれる。露出時間の制御についても、望遠側と同じように秒単位で設定が可能である(広角側は最大90秒、望遠側は最大60秒)。ラブスタックで天の川を映し出すこともでき、こういった点はライバル機にあたる Seestar S30 のおまけファインダーとは大きく異なる点と言える。

 FOV は約47.5° x 26.3° あり、言い換えればフルサイズ一眼に 45mm レンズを使ったときのような感覚だろう。センサーはソニーの IMX307 (1/2.8インチ) のようで、画素は 1920 x 1080 (約200万画素) 、1ピクセルのサイズは2.9 μm とのこと。レンズ性能は口径 3.4mm, 焦点距離 6.7mm という感じ (Fは約2ですね)。

Dwarf3 の広角側 (G-plane) の測光結果と線形性を示すグラフ. 横軸は器械等級, 縦軸はV等級. カタログ値は差し当たり sky chart から引いた (SIMBAD と大きな差は無い).

 測光には2秒露光で17枚スタックした FITS を用い、マカリィで G画像を抽出して実施した。アパーチャーサイズは恒星径 = 8 pix、SKY内径 = 10 pix、SKY幅 = 4 pixという設定です。約30星について測光したところ、上図のように、V等級と器械等級 (G画像) との間に、一応線形性が確認できた。

 なお露出時間を2秒とかなり短くしたのは理由がある。将来的にもし T CrB が爆発したとき、極大時の明るさは約2等に達する。これをサチらせずに観測するには、露光時間をきりつめるしかない(広角側はパンフォーカスなのでデフォーカスはできない)。そこで、例えばかんむり座のα星 (アルフェッカ = 約2.2等) が飽和しないラインを露出時間を色々変えて探ったところ、2秒露光であれば飽和せずに写すことができるとわかった。Dwarf3 の広角側を用いれば、T CrB の爆発時など、明るい星の測光を行うことは十分可能、ということは言えそうだ。

 ただし、上図のとおり一応線形性は確認できるのだが、望遠側に比べるとばらつきが大きいので、高い測光精度を求めてはいけない。つまり、明るい星を測光したい、変光幅が約1等以上はある、みたいなニーズには応えてくれるだろう (例: 明るいときのミラ、アルゴル、β Lyr など)。

 広角ゆえにフラット撮像も重要な要素になるのは当然だが、Dwarf3 はダーク撮像用の遮蔽板が内臓されていないので、これを温度環境に応じて自分で用意する手間があることは、本機のユーザーならよく知っていると思う。もちろん、測光に用いるときもダークは重要なので、Dwarf3 で測光を行うさいは (望遠も広角も) 、1次処理に関する知識を持ったうえで、望む必要がある。

 ちなみに、来年から国内でも出回るであろう Dwarf mini という新機種については、ダーク撮像用の遮蔽板が内臓されているようなので、ビギナーに優しい仕様になったのではないかと思う (Seestar と同じ感覚で使える?)。併せて広角撮像も Dwarf3 の強みを受け継ぎ FITS で行えるようなので、仮に T CrB キャンペーンで (爆発時用の) 観測マニュアルを書くことになれば、こちらに大きな期待を寄せている面がある。新機種 mini については、実は既に自己資金で予約を入れたので (フヒヒ)、手に入り次第スマート望遠鏡「測光に使う」という変態的な使い方について検証を続けてまいる予定です。

PS. Dwarf mini の日本語情報は、星見屋さんのホームページとあわせて、天リフさんとの YouTube 対談がとても参考になります (実機のサイズ感もよくわかる!)。

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Seestar/Dwarf 観測星図ツク朗 β版

 ChatGPT-5 のお力を借りて、「Seestar/Dwarf 観測星図ツク朗 β版 (1.0)」というWebアプリを開発しました (同サーバー内に設置)。まだβ版としての公開になりますが、用途としては Seestar S50, S30やDwarf3 というスマート望遠鏡に特化した観測星図を作ることができます。観測星図を表示するアプリは既にStellarium等、無料で使える大変強力なツールがありますが、新天体や移動天体(特にNEO)に対応させるには、ビギナーには幾つものハードルがあります。そこで、ここでは主に新星等の新天体や、小惑星 (特にNEO) 等の移動天体の観測&計画に利用することを想定し、以下簡単に機能と使い方をご紹介しましょう(※ご利用はPCのブラウザを推奨。あと、かろうじてタブレットの横画面なら使えるかも。スマホの縦画面は見づらいと思います。):

主な機能

  • 任意の天体の位置、赤経(RA)と赤緯(Dec)を入力し(2000年分点)、それを中心座標として星図を描く。
  • 星図は赤道座標、地平座標に対応(切り替え可)。
  • デフォルトでは約3°×3°の範囲を描く(プロット後も0.5°ずつ可変可)。
  • Seestar S50, S30, Dwarf3 の視野範囲を描画、切り替えが可能(プリセット)。
  • 任意の観測地(緯度経度)の入力が可能。ブラウザ経由で自動取得も可能。
  • 日時はJST(日本時間)で任意に入力可能。デフォルトではアプリを開いたときの日時が自動取得される。
  • 描画される恒星は VizieR より UCAC4 と Bright Star Catalogue (BSC) を参照している。
  • オプション機能で変光星 (VSX) のデータを重ねることも可能。
  • 描画された星(少し右下)をクリックすると、位置、V等級などを確認できる。
  • NASA JPL Horizons System (移動天体) の計算結果をコピペし、星図に重ねて表示できる。

観測星図を作ってみよう(例: かんむり座T星)

このアプリで最初に確認すべきところ.

 ここでは、かんむり座T星 (以下、T CrB) の星図を作ることを想定して説明します。まず、このアプリをブラウザで開くと、画面左側に 上図のような数値入力欄が出ています。デフォルトでは既に、星図を描くための中心の座標である赤経 (RA) と赤緯 (Dec) が入っています。この数値、実は T CrB の座標なので、今回のチュートリアルでは何も変更しなくて大丈夫です。

 次に、座標系と図のFOVというところは、後で変更することも可能なので、今回は一旦スルーします。

 次は観測地の緯度・経度の欄ですが、ここは自分で任意の値を入力して頂いても良いですし、自動取得ボタンを押して、ブラウザ経由で情報を取るのも良いでしょう。

 あとは日時(JST)の部分ですが、ここはアプリを開いたときに、自動でそのときの日時を拾っています。もし昼間の時刻になっている場合は、夜を想定して例えば日本時間の 21:00 という値を入力しても良いでしょう。※なお、内部の計算では世界時(UT)に換算しています。

星図を描画するときは、「UCAC4 + BSCを取得」というボタンを押す.

 以上の設定ができたら、ひとまず上図にもあるとおり、「UCAC4 + BSCを取得」というボタンを押してみましょう。しばらくすると、以下のような観測星図が描かれるはずです。このとき、デフォルトでは描画する暗い星の等級(下限)が14等までになっています。β版では12~18等まで可変させられるので、必要に応じてお使いください。加えて、デフォルトでは星図内に変光星 (GCVS名) が重なるようになっているので、不要な場合はチェックを外してください(描画後に外すことも可)。

試しに作ってみた T CrB の観測星図 (赤道座標). 緑の枠線は Seestar S50 の観測視野.

 もしDwarf3用に切り替えたい場合は、描画後であっても可能です。下図のように、プリセットを切り替えて、表示範囲 (FOV) の数値を変化させれば、Dwarf3 用の視野にすぐ切り替えられます。

プリセットの切り替えとFOVの変更.
Dwarf3 用の観測星図の様子.

 それから、描画後に座標系を切り替えることも可能で、事前に入力した任意の日時と観測地(緯度・経度)でもって、地平座標で表示することもできます。これは視野回転を伴う経緯台モードで観測している人に最適な機能かもしれません。以下の図はSeestar S30 の観測星図を地平座標で描いた例です。

地平座標で描いた Seestar S30用の観測星図例 (中心にT CrB).

 ところで、このアプリは描画した星図内の星をワン・クリックすると、下の図のように星の位置(RA, Dec)とV等級を表示する機能があります(星図下部に表示される)。ただし、まだβ版ということもあり、星のクリックは、対象星の少し右下をクリックしてください(なぜか星の中心を押しても反応しませんorz)。なお、選択された星は下図のように、黄色のサークルが表示されるので、どの星の情報を見ているのか、一応確認することができます。

星をクリックして情報(位置, V等級)を表示している様子.

 以上、このアプリの最も基本的な使い方なのでした。

移動天体を表示してみよう!

 では次に、少し応用編として小惑星などの移動天体の表示方法について解説します。まずはゴールとなる星図を以下に示します:

 これは最近実施された小惑星 2025 FA22 の観測キャンペーンに関連した星図となります (キャンペーンの詳細はシン・APAONのHPをご覧ください)。地球に接近する NEO と呼ばれるような小惑星を観測する場合、天体の移動が速いため事前に観測する位置や視野を確かめておくことが重要です。そこで、精密な位置計算をしてくれることで有名なNASA JPLのHorizons Systemの計算結果を用い、それをコピペすることで上図を描く機能を本アプリには持たせてあります。

 それでは試しに、Horizons Systemを使って任意の期間における小惑星 2025 FA22 の位置データを抽出することにしましょう。

サイトにアクセスしたら “App” を押す.
Edit を押して必要な情報を入力した状態.

 とはいえ、ビギナーの方はサイトが英語なので面食らった方もいるでしょう。必要な設定は2~4番のEdit の部分のみです。順に解説すると、

  • Edit 2番: 天体名。ここでは小惑星の符号 2025 FA22 と入力(もちろん彗星も扱える)。
  • Edit 3番: 観測地。IAUの天文台コードを持っている場合はそのまま使える。無い場合は、Edtit -> Search for a Location より、Select from a List of a Earth Locations (国と都市名) か、Specify Coordinates (緯度経度の入力) を選択して、決定してください。
  • Edit 4番: 計算期間と刻み。位置を調べたい天体の計算する期間やステップを決めます。ここでは、2025-09-19 00:00~09-21 00:00とし (UT; 世界時表記)、計算のステップを30分刻みとしました。

 以上の計算設定が済んだら、緑色の “Generate Ephemeris” というボタンを押しましょう。すると、以下のような結果がページ下部に表示されるはずです:

計算結果の冒頭部分. 主に軌道要素などが表示されている. さらに下のほうへスクロールすると計算結果がある.
テーブル状になっている部分が、設定した天体の位置 (RA, Dec) 等の予報・計算結果となる. ここでは選択している日時の行で星図を描くことに.

 まず冒頭に出てくる数字の羅列はこの天体の軌道要素になります(詳しくは割愛)。そして、さらに下側を見ていくと、数字が表になって並んでいる欄が出てきます。簡単に言えば、これがある任意の観測地における天体の位置 (RA, Dec) や等級などを表しています。

 今回は例えば、2025年9月19日16:00 UT (日本時間20日01:00) に狙いを定め、この時刻の座標を中心として星図を描いてみます。該当の日時のところにある

  • 02 42 03.90 が赤経 (RA; hhmmss)
  • +23 39 37.9 が赤緯 (Dec; ddmmss)

となるので、これを観測星図ツク朗にまず入力しましょう。次に観測地の緯度経度は、Horizons Systemとおよそ同じ値にしておくと良いでしょう。さらに、日時については、UTではなくて日本時間を使い、2025年9月20日01:00 JSTとします。この状態で、星図の描画ボタンを押して、任意の位置の星図が描かれるか確認しても良いです。

計算結果を観測星図に反映するために、$$SOE〜$$EOE の範囲を選択&コピーしている様子.

 続いて星図内に小惑星をするために、Horizons Systemの計算結果をコピーします。このとき $$SOE〜$$EOE に囲われた範囲をコピーしてください。

コピーした情報をアプリにペーストしている様子.

 あとは、星図アプリの計算結果貼り付け欄に、ペーストします。そして移動天体をプロットというボタンを押すと、先にお見せしたように、観測星図内に移動天体の位置を描くことができます。このとき、プロットされた日時については、日本時間(JST)に変換されているため、ご注意ください。

番外編

 ここまで、紹介してきた観測星図作成アプリがどこまで役に立つのか、正直未知数であるが、実際にSeestarなどで観測するさいに、一つ懸念材料があるので紹介しておく。

 例えば、上記の 2025 FA22 を観測しようと思った場合、位置座標 (RA, Dec) の多くは2000年分点で取り扱っています。しかし、Seeatar で任意の座標を登録して導入を試みる場合、座標系は現在分点となっているのです。この違いのおかげで、2000年分点のまま利用してしまうと、ドンピシャで正確に導入することができません。すると観測中、視野の同定に時間がかかる問題が少なからず生じます。そこで、実は2000年分点を現在分点に変換するアプリも最近作りました(これは本HP内に)。

 Seestar 等をお使いで、任意の天体を登録するさいは、上記の変換アプリで現在分点に変換して登録を行うと、観測の効率がグっとアップすると思います(最近だと私はレモン彗星 C/2025 A6の観測で役立ちました)。なお、Seestarであれば、任意の天体の座標を登録する方法は「スマート望遠鏡活用ハンドブック」(21章参照) という出版物に執筆をしたことがあります。大阪市立科学館の渡部義弥さんのHPにPDFデータが公開されているので、宜しければ併せてご参照ください。

さいごに

 このたび公開した「Seestar/Dwarf 観測星図ツク朗 β版 (1.0)」は三流プログラマー (基本 R しか使えない人) が AI のチカラを使って作成しました。HTML + CSS + JavaScript がベースになっているので、ソースコードは誰でも見えると思います(変なコメントアウトもいっぱいあるはず)。多分ず~っとβ版でいく可能性もありますが、近々簡単なアップデートとして、描画した星図を PNG や PDFで吐き出す機能は持たせたいと思っています。 何か不具合や改良点などあれば、コメント欄に残しておいて頂けると… 作者の気が向いたとき、時間を作って改良に励む可能性があります (^^;

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待ってました!Seestar の EQモード

アップデート直後にSeestar S50をEQモードで運用している様子。

 2025年3月21日に、いよいよ ZWO 社の Seestar シリーズに EQ (赤道儀) モードが公式アップデートされました。アプリのバージョンは 2.4.0 となります。Seestar は登場時から経緯台式での運用が基本でしたが、一部の玄人の間では非公式に EQ スタイルで楽しむ方もいました。しかし、非公式な手法では Dec がマイナスの天体に対しては観測が行えませんでした。今回の公式アップデートでは、そのような制限は無く、さらに極軸合わせはアプリの指示に従って容易に極軸合わせが行えます(ただし、補正用に何枚か撮影を行っているので、頭上に星が見えている必要がある)。

アプリ内のEQ モード設定画面。

 極軸合わせはまず、高度角を大雑把に合わせ、その後 “Get Polar Align Deviation” を押すと、Seestar が頭上の星を数カ所撮影しだします。しばらくすると、高度角と方位角を微調整するための数字が出てきます。数字がオールグリーンになるまで調整すると、最終的に緑色のチェックマークが現れます。なお、EQ モードに切り替えると、電源のパイロットランプが「緑色」になります。Seestar の極軸合わせについては、アプリ内に丁寧なチュートリアルもあるので、1回それを見ておけば、多くの人が使える気がします。

EQモードで観測してみた M42と、アプリ内の星図の様子。星図は地平座標系だが、グリッドは地平系から赤道系に切り替えられる。

 EQ モードで撮影を行うと、当然ですが画像の上が北になり、そして視野回転が無くなるため、長時間の観測に大きな恩恵をもたらしてくれます。とりあえず、上図のように見栄えのする M42 をテストで撮り続けても良かったのですが、EQ モードなら連続測光観測が行いやすいのではと思い、食変光星を撮って一晩遊びました。

Seestar S50 で観測中の UV Leo (8.9 – 9.6等, EA)。露出10秒。比較星は約9.2等、チェック星は約9.9等。

 3月21日の晩、何か良さげな食がないか、神奈川県の永井氏の予報を参照したところ、24時過ぎに主極小となる UV Leo という星があったので、Seestar を向けました(このとき、任意のRA, Decを Seestar に登録して導入)。導入後、やはり画像の上が北なので、目的星が同定がしやすく、EQ モードなら他の変光星の観測キャンペーンもやりやすいのでは、という期待も膨らみます(皆、同じ比較星が使えるし)。

UV Leo の光度曲線 (2025年3月21日)。JST で22時過ぎから26時過ぎまで、約4時間近く追った。露出10秒で約1200枚の画像が得られた。

 早速、測光もしてみると(AIP4Win V2 にて)、イイ感じの主極小を捉えることができました。口径5cm、約8万円の機材でこれだけの観測ができるとは。こうなると、明るめの矮新星のスーパーアウトバースト(スーパーハンプ)もSeestarで観測してみたくなってきます。

 ただ、Seestar は 5~6 枚ごとに、恐らく視野の位置修正のためのジャンプが入るため、アパーチャーがそのたびにずれてしまいます。ソフト側でうまく追いかけてくれることもありますが、AIP4Win では効率があまり良くありませんでした。このあたり、連続測光観測の普及を目指すのであれば、AstroImageJMuniwin なんかも使ってみて、どれが最も効率良く測光できるのか、試してみる必要がありそうです。

 ところで、Seestar S50 の場合、架台(三脚)との接続には注意点がありました。

Seestar S50 の底面。ゴム脚の間隔は約9cmでした。駆動部よりゴム脚のほうが高くなっています。

 Seestar S50 は、上図のように三脚との固定ネジの円形部分が駆動することで、方位方向に動きます(EQモードだと赤経方向)。この底面には4ヶ所ゴム脚がついていて、円形の駆動部分よりも高さ(厚み)があります。そのため、EQモードで使用するさい、冒頭の写真のように、カメラ三脚に装着するときは、三脚側の台座の面積が大きいと、ゴム脚が台座に干渉して動作不良が発生します (当然、経緯台式で運用する場合も注意すべきことですが)。

 実は冒頭の写真のような感じで最初テストしていたら(室内から)、突然追尾が暴れ出し、しばらく原因がわかりませんでした。ただ望遠鏡の傍にいって動作を観察すると、「ブブブっ」と、何かがこすれるような音がしていたので、「あ!ゴム脚が原因か!!」と犯人を特定できたのでした。

Seestar S50 と三脚の間に、ゲタをはかせている様子。ゲタはレベル微調整用の雲台です。

 S50 を使っている方は、本体の大きさと重量を考えると、EQモードを使うときは(重心がアンバランスになるので)、なるべくしっかりした三脚に固定したいと思うはずです。しかし、しっかりした三脚は台座の面積が大きい場合も少なくないと思いますので、S50 を固定する場合は、駆動時にゴム脚が干渉しないよう、何かゲタをはかせて装着すると良いのかもしれません。一方で、姉妹機の Seestar S30 はさすが後継機で、底面の駆動部分が約5mmの高さをもっています。こちらはゴム脚も無いので、S50 のような心配は無用でしょう。

さいごに

 最後に EQ モードを使った感想等をまとめておく:

  • とりあえず、最高のアップデートだ。
  • 画像の上が北だと、星の同定がやりやすい!
  • 視野回転が無いと、長時間の観測がしやすい!
  • フォーク式赤道儀になるので、子午線反転がない!
  • 観測の幅が広がる。
  • EQモードでも5~6枚ごとに視野調整(ジャンプ)が入る。
    →そもそもこの機能はEQモードに必要か?
    →測光のとき、アパーチャーが外れやすい。
  • 任意の天体登録、プランモード、EQモードが揃ったことで、Seestar を使った変光星観測が格段に実施しやすくなった気がする。
  • T CrB 以外で、市民科学的な観測キャンペーンの更なる展開が期待できる(同一機材、同一の比較星を使って)。
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Dwarf3 を用いた測光観測の検証 (1)

スマート望遠鏡 Dwarf3

 Dwarf3 というスマート望遠鏡について、測光観測が行えるのか、いくらか検証を行ったので、現状の結果等をまとめておこうと思う。なお、本検証は例によって星見屋さん (南口雅也氏) の依頼を受け、日本変光星研究会の所属として実施しています。また、依頼に伴う報酬の授受は一切ありません(検証には星見屋さんより送って頂いたデモ機を用いています)。ここに書く文章については、「測光」や「Seestar」のことを知っていないとわかりにくい書き方になっているので、予めご理解頂きたい。


Dwarf3 について

  本機はいわゆるスマート望遠鏡の一種である(2024年7月よりクラファン開始、同年12月より一般販売開始)。天体撮影(電視観望)に必要な機器類をおおよそ内蔵し、スマホやタブレットを使って統括的な操作が行える。ライバルは何といっても ZWO 社の Seestar シリーズだろう。詳細なレビューは他の人にお譲りするが、特筆すべきはレンズが2眼になっており、望遠側と広角側を使い分けて、天体撮影が行える点である。加えて赤道儀 (EQ) モードを初めから公式にサポートしている点も評価できる。さて、本機の望遠鏡としての基本スペックは以下の通りである(望遠側についてSeestar S50と比較):

項目Dwarf3 (DWARFLAB)Seestar S50 (ZWO)
口径35mm50mm
口径比F4.3F5
焦点距離150mm250mm
イメージセンサーIMX678IMX462
センサーサイズ1/1.8″1/2.8″
解像度3840×21601080×1920
ピクセルサイズ2.0×2.0μm2.9×2.9μm
A/Dコンバーター12bit12bit
画角約2.9°×1.6°
※約2.8秒角 / 1pix
約0.7°×1.3°
※約2.4秒角 / 1pix
公式マニュアルにも仕様が日本語で細かく書いてある。

 ちなみに、広角側については口径3.4mm、焦点距離6.7mmという光学系で、IMX307 (1/2.8″, 1920×1080, 2.9μm) というセンサーが載っているようです。このスペックだと画角は約39°×25°と計算され、冬の大三角がぎりぎり入るくらいのイメージだと思われます。公式ページにはフルサイズ換算で広角側が45mm、望遠側が737mm相当と書いてありました。なお広角側については、ただのファインダーではなく、露出をかけて星座の写真を撮ることができる。しかもFITSで保存することもできるため、測光についても期待が膨らむところである。

 あと、重要なのが内蔵フィルターだ。Dwarf3 には天体モードで撮影する場合、可視光フィルター、天文用フィルター、デュアルバンドパスフィルターの3つを選ぶことができる(下図参照)。デュアルバンドパスフィルターについては、Seestar のDuo-band (LP) フィルター(Hαと [OIII] 透過)と同等と考えて良さそうですが、Dwarf3 の可視光フィルターと天文用フィルターは長波長側の特性が異なっているようである。詳しくは星見屋さんのHPにグラフが公開されているので参考まで。なお測光観測では「天文用フィルター」で良いのではないかと思われる。

天体モード時に選択できる3種のフィルター.

FITSヘッダーについて

 まず本機は望遠側で撮った画像を FITS で保存することができる。Seestar と同じく、ライブスタック後の画像と、スタック前の個別画像が保存される。スタック後のFITSファイルについて、ヘッダー部を閲覧してみると、以下のようになっていた:

Dwarf3のスタック済 FITS ファイルのヘッダーをマカリィで閲覧.

 FITSヘッダーを見ると、Seestarに比べると情報量がやや少ない印象を受ける。例えば、スタック枚数、フィルター名、フォーカスポジション値は Seestarにはあったが、Dwarf3には無い(一部、ファイル名から読み取れるが)。さらに RA, Decの記述はあるものの、WCS に関する記述も無いため、位置観測をやってみたい人にとっては少々物足りなさを感じるかもしれない。しかし、このあたりはユーザーの声次第で、アプリやファームウェアのアップデートによって、今後追記される可能性はあるだろう。なお、BITPIXは16ビットになっているが、実際には12ビットとなる。これはSeestarも同じで、BITBIXの表記ルールの都合により、実際とは異なる数値が入る。且つ、階調(カウント値)も12ビットから(疑似的に)16ビットに再スケールされていることが確認できた。

ダークとフラットについて

 測光観測を行う上で重要なのが、1次処理に用いるべきダークやフラットの存在だ。Dwarf3 は出荷時にダークとフラットを内部ストレージに持っている(PCと接続すれば、このダークとフラットのFITSファイルも確認できる。公式マニュアルにも記載あり)。撮影時、フラットに関しては内部ストレージにあるファイルが、ライブスタック時に自動的に適用される。一方、ダークについては最初から入っているデータは撮影時の温度が30℃くらいでした。そのため、テスト撮影時は10℃程度だったので、新しくダークを撮ったほうが良い、というアラートが表示されます。どうやら内部に持っているダークファイルと8℃以上の差がある場合はアラートが出るようです。

 Dwarf3 はSeestarと違って、露出時間の設定が細かくいじれ、さらにゲインの数値も任意で変えられます (Seestarはゲイン固定、露出時間も10秒、20秒、30秒しか選べません)。ゆえに、露出時間とゲインを頻繁に変えると、撮影のたびにダークを用意したり、事前に似た「温度」になることも考慮して準備しておく必要があります。撮影設定(露光時間&ゲイン)については、プリセットとして4パターン用意されているので、基本はそれを使うことにして、ダークもプリセットに合せて用意しておくと良いのかもしれません(あと、中級者以上向けの設定として、望遠側の撮影には 2×2 のビニングをかけられる項目もある。この場合もダークやフラットの用意は、同じ設定になるように注意せねばならない)。

天体モードで撮影するさいの露出時間やゲインに関する設定画面. プリセットは4種類ある(上記のスクショからは一つ消えているが、実際にはアプリを横スクロールすると表示される)。
「望遠ビニング」という項目で、4k = 1×1、2k = 2×2 というビニングが選べる.

 このような自由度は、少々初心者には難しい&煩わしく感じるかもしれませんが、逆に言えば露光時間やゲインが細かく設定できる点は、痒い所に手が届く仕様とも言えます。とはいえ、Dwarf3 のダーク撮影は物理的に(スマート望遠鏡だからこそ)面倒臭いと感じる点もあります(あくまで個人の感想)。実はSeestarはダーク撮影用の遮蔽板が内蔵されていますが、Dwarf3 には無いのです。そのため、公式マニュアルには「付属の太陽用NDフィルターを対物レンズにつけて、暗所で撮ってね」という感じで書いてあり、私はこの方法に従ってダークを撮っています(まぁ、CCDやCMOSでダーク撮るときも、メカニカルシャッターが無い場合は、望遠鏡に蓋をして撮ったりするわけなので、まったく同じ手間といえばそれまで)。先の公式マニュアルにはフラット等の撮影方法も書いてあるので、測光をやってみたい方は一読しておくと良いだろう。

望遠側の測光テスト

 差し当たり、Seestar S50 で行った検証と同じようなことをやってみることに(このとき、アプリ Ver. 3.1.2B80、ファームウェアV1.3.0)。まずは T CrB の撮影を行ったので、その FITS 画像を使って検証を進めてみた。

Dwarf3 (望遠側)で撮影した T CrB 領域の画像。10秒露光、Gain 60、1×1ビニング、11枚スタック。2025年3月10日1時頃(JST)撮影。

 将来的な教育・普及用途も考慮して、測光の検証にはマカリィを用いている。撮影された画像については、まずスタック済みのファイルを用い、それをマカリィでRGB分解。抽出したGプレーンについて、開口測光を実施しました(恒星径8、SKY内径10、SKY幅4)。測定は30星ほど行い、器械等級とUCAC4 の V等級でグラフを作成したところ、以下のような結果が得られた。

Dwarf3 のGプレーン測光値(器械等級) vs V等級 (UCAC4)。破線は回帰直線では無くただの対角線。

 Dwarf3 のGプレーン測光値(器械等級)とV等級の間には一定の線形性が確認でき、Seestar S50 と同じような傾向を持つことがわかる。これは、Dwarf3 のチップ IMX678と、Seestar S50 のチップ IMX462 の分光感度特性 (G の透過波長) が似ていることに起因しているものと考えられる(分光感度特性はググると、それぞれグラフが見つかる)。

 なお今回の撮影設定(10秒露光、ゲイン60、1×1ビニング、11枚スタック)では、明るい星は約7.5等で飽和が認められた。逆に暗い星は約13.5等くらいまでなら測光でき、それ以上暗い星の測光は今回難しかった(テスト観測時、西の空に月光あり)。どうせなら、14等くらいまで写って欲しいところなので、暗い星については、空の条件、露出時間をのばす、EQモードで撮る、2×2ビニングする等、まだ色々試す余地はありそうです。

 さて、線形性も確認できたので、そのまま調子に乗って T CrB の明るさを簡便に算出してみました (やり方や比較星はキャンペーンと同様)。

マカリィで T CrBと比較星を測光している様子.
digphot4 で T CrB の明るさを算出している様子.

 すると、約9.93±0.09等という数字が出てきました。一応、T CrBの監視キャンペーンの報告値と比較してみると、同日の明るさは平均約9.9等だったので、大きな矛盾は無さそうでした。キャンペーンで Dwarf3 の測光結果を広く受付けるか、そこはまだ時期尚早なのですが(やるならマニュアル整備等の準備も必須)、もう少し色々と試して、外堀を埋めていきたいと思っています(EQモードでの連続測光や、広角側の測光も検証したい)。

時刻について

 ところで、Dwarf3 の「時刻」はどのように記録されるのでしょうか。FITSヘッダーなどを調べてみました。まずスタック済みのファイルを見てみると、

FITSヘッダー時刻: 2025-03-10 01:01:52

となっていました。次に、スタック前の個々のファイルを見てみると、1番最初に撮られたデータは、

FITSヘッダー時刻: 2025-03-10 00:59:35

となっています。それでは、最後にスタックされたファイルはどうかというと、

FITSヘッダー時刻: 2025-03-10 01:01:35

となっています。う~む、なんだかスタック済みの時刻保持が怪しい気がします。少なくとも、スタック前の個々のファイルの時刻については(ファイルプロパティの生成時刻と1~2秒しか変わらないので)恐らく、露出終了時刻でしょう。しかしスタック済みのファイルについては、最終フレームの時刻から17秒後の時刻になっています。ライブスタックされたFITS画像を保存するのに、それくらいの時間が必要なのでしょうか?あと、スタック済みのファイルには以下のようなファイル名がついています:

stacked-16_HD 143454_10s60_Astro_20250310-005926302.fits

 このうち、太字にした部分は、日時のはずで、時刻は0時59分26.302秒と読めます。あれ?なんだこれ。恐らくこれは、スタック1枚目の画像のFITSヘッダー時刻の約10秒前の数字と思われます(つまり1枚目の露出開始時刻?)。とりあえずスタック済みファイルの露出中央時刻については(スタック前のファイルより)、頑張って自分で計算できそうですが、このあたりは初心者には難しい・面倒くさいと感じるところではないかと思います。そもそも、時刻の取り扱いが少々雑な印象を受けますので、科学的な「観測」に使うためには、このあたりの改善(アップデート)が望まれるところでしょうか。

現状のまとめ

 ここまでの内容を以下の通り、箇条書きでまとめておく:

  • Dwarf3 は Seestarよりも細かい撮影設定が可能。
    (Seestarよりも幅広い観測ニーズに応じられそう)
  • 測光で使うにはダーク等(1次処理)に関する適切な知識が必要。
  • Gプレーンの測光については Seestar S50 と概ね同様の結果。
    (GプレーンとV等級の間に強めの相関あり)
  • 現状、観測時刻の取り扱いに注意が必要。
  • 今後はEQモードを用いた測光、広角側の測光などを検証予定。

 以上、また何か Dwarf3 の測光観測で進展があれば、続編を書きたいと思います!では。


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Seestar S50 で天体スペクトルを撮る
かんむり座T星の監視・観測キャンペーン開始

■発表資料
Seestar S50を用いた反復新星T CrBの観測キャンペーン」(発表スライド; PDF
 第4回新天体捜索者会議 in 岡山 (倉敷科学センター)
 会期: 2024/11/16–11/17
Seestar S50を用いた測光観測の検証と普及」(発表スライド; PDF
 第38回天文教育普及研究会 (2024年年会 in 福井)
 会期: 2024/08/19–08/21
Seestar S50 を使った測光観測の検証と展望について」(発表スライド; PDF
 天体画像を使った天文教育指導者ワークショップ (PAOFITS WG) in 明石市
 会期: 2024/03/20

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かんむり座T星の最近のスペクトル

 最近、ATel にかんむり座T星 (T CrB) のスペクトル変化に関する投稿があったので、メモを残しておく。このメモはかんむり座T星が “今すぐにでも爆発する” というのを煽り立てるものではないことを先に断っておく。しかし、この星に興味を持っている方は、引き続き粛々と、楽しみながら監視を継続してまいりましょう(私も含め)。

 なお、本メモは ChatGPT も活用している。


 さて、今回気になった ATel の投稿は以下2本である(併せて概要を箇条書きで示す):

ATel #17030
A sudden increase of the accretion rate in T Coronae Borialis

  • 過去2.5週間で水素輝線の高さが継続的に増加
  • 水素輝線の変化
    • 等価幅が 2025年1月21日~2月9日で 2倍に増加
    • ダブルピークから シングルピークに変化
  • ヘリウム輝線の変化
    • 12月に消失 → 1月21日以降、再出現
    • 等価幅が 4倍以上に増加(He I 5875, 6678, 7065Å、He II 4768Å)
    • He I 5876 に新たな赤方偏移ピークが出現(5874Å の青方偏移ピークと並ぶ)
  • 昨年11月ヘリウム輝線出現時に光度曲線が急増(←ほんま?)
  • 現在スペクトル変化はあるが光度曲線に増加なし
  • 降着率の急増を示唆 → 最終的に新星爆発につながる可能性がある
  • 爆発は今年または来年に発生すると予測されている(Schaefer et al. 2023)
  • スペクトルはHPで公開している(R = 65000 / エシェル分光器)。


ATel #17041
T CrB on the Verge of an Outburst: H alpha Profile Evolution and Accretion Activity

  • Hα 強度が増加
    • 2025年2月7日のフラックスは1月のデータと比べて約2倍。
    • 2月初旬にフラックス増加が急激に上昇
  • Hα の線幅(FWZI)の変化
    • 1月から2月にかけ、約100 km/s 増大している。
    • 線幅の増加は降着円盤の拡大を示唆(←ほんま?)
  • 降着率の上昇 → 降着円盤の拡大 → 白色矮星周囲の質量増加
  • RS Oph でも2021年の爆発前に同様の変化が観測されたHabtie & Das, 2025
  • Hα の急激な強度増加と線幅拡大 → T CrB の爆発が近い可能性が高い

 とまぁ、両方とも、とにかくスペクトル(水素などの輝線)の急激な変化について報告してくれています。そして、それは質量降着率が増していることを示唆していて、なので、もうすぐ爆発するかも、みたいな締めくくり方ですね。


 もうすぐ爆発するかどうかは一旦置いておいて、後者の ATel は RS Oph (へびつかい座RS星) の静穏期との比較があり、その点に私は興味を持ちました。ATel #17041 の主著者は Gesesew R. Habtie さんという方で、ご所属はエチオピアの Debre Berhan 大学。ATel にも引用のあった Habtie and Das (2025) は今年の1月に MNRAS で出版されたばかりの論文のようです。以下、この論文についてメモを残す:

研究の背景と目的

  • RS Ophは、白色矮星(WD)と赤色巨星(RG)からなる共生型反復新星であり、約 15 年周期 で爆発を繰り返す。
  • 爆発メカニズム:
     白色矮星が赤色巨星の恒星風から物質を降着し、臨界質量に達すると熱核暴走反応が発生し、新星爆発が起こる。
  • 静穏期の重要性:
     降着円盤の進化や降着率の変化が次の爆発の発生に関係すると考えられるが、詳しくは解明されていない。
  • 目的:
     2006 年から 2021 年の静穏期における RS Oph の分光特性を調査し、降着円盤の進化を明らかにする。

結果

(1) Hα、Hβ 輝線の変化

  • Hα、Hβ の輝線はすべての時点で観測され、時間とともに強度が増加
  • 2018年以降、特に Hα の輝線強度が急上昇 → 降着率の増加を示唆
  • スペクトルのプロファイル:
    中央吸収を伴うダブルピーク構造を持つ時期があった
  • 2021年の爆発前に Hα の線幅が顕著に拡大(降着円盤の進化を示す)

(2) He I, Fe II 輝線の変化

  • He I(5876Å, 6678Å, 7065Å)と Fe II の輝線が 2018 年以降に顕著に増加
  • 鉄の存在量が時間とともに増加 → 赤色巨星の恒星風から供給された可能性
  • ヘリウムの存在量は減少傾向 → 降着物質の水素で希釈された可能性

モデル解析

  • CLOUDY を使って、数値計算。
  • 降着円盤の温度と輝度が、ともに増大傾向(2018年以降さらに増加)。
  • 2008~2016年、降着円盤の密度と外半径が、ともに増大。
  • 2018~2020年、円盤の内側の密度はさらに増加。一方で、円盤の外側の密度は減少。円盤の外半径についてはさらに増大。
  • 2018年以降、質量降着率が急上昇。

結論

  • RS Oph のスペクトルから静穏期における降着円盤の進化を分析した
  • 2018年以降、質量降着率と輝線強度の急増を確認
    → 爆発の準備段階に入っていた可能性が高い
  • Hα、He I、Fe II の増加が爆発前兆の指標となる可能性
  • 降着円盤の拡大が加速
    → 今後他の反復新星の爆発予測において、静穏期の分光観測が重要
  • 継続的な分光観測とモデリングによる爆発予測の精度向上が求められる

 ふ~む、なるほどねぇ1。こういう具体的な観測例をもとに、爆発の前兆について考えるのは面白いと思いました。この手の共生星のスペクトル(輝線)については、共通大気 (common envelope) 由来のものが支配的なのかな、と勝手に思い込んでましたが、降着円盤由来だと考えらているのですね。天文学辞典にも載ってました。

 ちなみに、RS Oph の場合、輝線の急な増大は2018年以降にあったとのこと。論文内の Fig. 5を見ると、2020年にやたら質量降着率と降着円盤の半径が増大しているグラフになっています。RS Oph の前回の爆発は 2021 年でしたので、まぁ、スペクトルに何か大きな変化があったとしても、爆発までは1~3年くらいのラグがあるのでしょうか?!このあたりは、RS Oph だけではまだまだ分からないはずなので、今後 T CrB がどうなっていくのか、粛々と監視を続けてまいりましょう (^^v


  1. 偉そうにメモしているが、実はかなり久々に論文なるものを眺めた。ChatGPT のお陰で頭の中が整理しやすく、時短にもなるが、現役の院生さん(ちゃんと研究している方)なんかは、きちんと原文や図表を読みとく習慣はあったほうが良いと思う。 ↩︎
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INNOREL の三脚 (RT90CG)

 Amazon で人気らしい INNOREL の三脚 (RT90CG) をポチってしまいました。脚の太さは40mm あり、評判通りがっちりしています。本体の重量は約2.8kgで、手に持ったときの第一印象はやはり軽いです(耐荷重は40kgらしいですね)。迷彩柄については、脚にマジックテープ式のモノが巻かれているだけで、着脱が可能です。これを外すと下地は脚を伸ばしたときに出てくる黒地と同じになります。

 自分の用途としては、ジッツオ5型の互換アダプターを介して ZWO AM5 赤道儀を載せ、遠征先で小型の鏡筒を運用するときに活用する予定です。なおアマゾンのレビュー内には、私と同じ目的で ZWO AM5 赤道儀を載せている方もいました。下の写真のように、AM5を載せたときの親和性は高く、遠征時の運用が楽しみでなりません。付属のストーンバッグにはポータブルバッテリーと、念のため転倒防止のために3~5kgのウェイトを載せることになるでしょう。

 ちなみに、お値段については、自分がポチったときは3万9999円でした。これに約7000円プラスすれば(国内の場合)、AM5 などに使える ZWO 純正の TC40 というカーボン三脚が買えてしまうので… AM5 の運用が前提で軍資金に余裕があるなら、純正で良いと思います (純正は重量約2.3kg、耐荷重50kgなので、スペック的にもこちらに軍配が上がる)。ただ自分の場合は、クレジットカードのポイントを5000円ほどアマゾンギフトカードに突っ込んだので、今回約3.5万円で手に入れた感じです。なお本三脚の天文用途でのレビューについては、YouTube の “ボスケのレンキンTV” さんがとても参考になります。詳しいレビューは是非、こちらをご覧ください:

 ボスケさんのレビューが素晴らしいので、特に私が書くことは無いのですが、ちょっとだけ、細かい点を見ていきたいと思います。まず、ジッツオ互換の付属アダプターは上部に 3/8 インチネジが飛び出しています。側面には抜け防止のための溝も切ってあります。

 アダプターの着脱については、レバーを緩めるのは当然のこと、三脚側にスイッチみたいなのがあるので、これを押しながら引き抜きます。このスイッチは、下の写真のように、アダプターの抜け防止のための爪を可動だせるためのものです。

アダプター着脱用のスイッチ
アダプター抜け防止用の爪

 あと付属品の中には、以下のようなパーツがありました(頭のネジは3/8インチ)。これは水平を自在にぐりぐり調整できるアダプターで、天文用途でも使用する機材によって、大変活躍してくれそうです(例えば Seestar など)。

 それから三脚ケースも良い感じです。ボスケさんも仰るとおり、クッション材も入っていて、けっこうしっかりた作りです(迷彩柄なので目立ちますがw)。ただ私は車での遠征がメインなので、ケースには入れず(出し入れが面倒というのもあるし)、車には裸でポンっと積み込むだろうなと思います。なおケースの全長は約80cmあり、折りたたんだ状態の三脚(約60cm)に比べるとちょっと長いです。このケースに三脚を収納すると、以下のように少しだけ (約18cm) スペースが空きます。機材によってはヘッド部に AZ-GTi とかを搭載したままケースに収納できそうな感じです。

 以上、まだ本格運用はしていませんが、簡単にご紹介まで。

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Seestarで地球接近小惑星 2024 MK を観測してみよう!

はじめに

 つい先日、星見屋の南口さんより、2024年6月16日にATLASによって発見されたばかりの地球接近小惑星 (NEA) 2024 MK について、Seestar S50 で観測したら面白くないですか?という感じのお話を頂戴しました。 事の発端は以下、新進気鋭の天文学者・紅山仁さん (博士) の X ポストとのこと。

 それで、私も色々調べたり、はたまた紅山博士から DM で少しご意見を賜ったりする中で、「ふむ、これは多数の Seestar で観測したら市民科学として面白いかも」と思うようになりました。それで、例によってイチ観測者(個人)という形で、南口さんからの依頼として急遽「Seestarで小惑星 2024 MK を観測してみよう!」をでっちあげることにした次第です(※星見屋さんからの金銭の授受は一切ありません)。

 あと、最初に断っておくと、恥ずかしながら小生は太陽系天体にはあまり明るくないです(専門は一応、新星などの変光星です)。ここに書くことは、科学的なお話よりも、観測手法的な側面が強いので、予めご了承ください。

小惑星 2024 MK について

 2024 MK は先にも書いた通り、2024年6月に発見されたばかりの NEA (地球接近小惑星) です。どうやら (ESA などを見ると)、6月29日13:46 (UT) に最も地球に近づき、その距離は約29万kmに達するみたいです(月軌道よりも内側)。これは日本時間だとちょうど前半夜の29日22:46頃にあたります。MPC などの予報では見かけの明るさが約9等になっています。あと、小惑星の大きさは120~260mらしいです。

2024年6月29日22時46分 (JST) の小惑星2024MKの位置 (観測地: 徳島県阿南市). Stellarium でシミュレーションした様子.

 最接近時の 2024 MK の位置については、いて座の東側となります。そのため、お天気次第にはなりますが、高度的にも観測はしやすい位置だと思います。ちなみに(当然ながら)、スカイ・モーションは非常に速いです。MPC で調べてみると、日本時間29日23時頃だと、1分間に約380秒角 (約6.3分角) も動くようですね。Seestar の場合、最短露光時間が10秒なので、観測に成功すれば、1枚の露光で約1分角くらい線状に延びて写ると考えられます。そのため、約9等の天体とはいえ、Seestarでどの程度のクオリティで写るかは、やってみないとわからない部分があります。夜空の明るさの影響も受けそうですが、筆者の肌感覚では市街地で無ければ、十分観測できると考えています。

Seestar を使った観測方法について

 今回の観測では (紅山博士のご助言を受け)、多数の Seestar ユーザーによって、小惑星 2024 MK の明るさ (見かけの等級) を得ることが主な目的となります(紅山博士によれば、「明るさの情報のみから小惑星の表面状態を推定できる可能性がある」とのことです)。

 ただし、Seestar は直接 2024 MK に GoTo するための導入データがありません。そのため、Seestarが持っている天体リストを使い、その領域を小惑星が通過するところを観測する、待ち伏せスタイルで実践する方法をご紹介します(これならビギナーでも簡単だと思われます)。

NGC6818 のあたりをちょうど通過する小惑星2024MKの様子(@徳島県阿南市/Stellariumより).観測地にもよるが、2024年6月29日のおよそ23時8分~23時15分頃 22時27分~22時34分頃 に、Seestar の視野内を通過していく.手書きの時刻と位置は JPL の ephemeris (計算結果) をもとに追記.今回 Stellarium の計算結果は使わないほうが良いです.

今回、Stellarium など星図ソフトの計算結果 (位置・時刻) は
使わない方が良いです!!上図のように、大きく時刻・位置がずれます。

 実は Seestar で小惑星 2024 MK を観測した場合、NGC6818 をちょうど中央に導入しておくと、2024年6月29日23時8分~23時15分 22時27分~22時34分頃に、約7分間かけて視野内を通過していきます(徳島県阿南市の場合)。他にもNGCやIC天体の近くを通過しないか調べましたが、偶然にもこの天体のみが、最もドンピシャで良い待ち伏せ対象でした。箇条書きで簡単にま観測方法をまとめると…

  • 詳細設定で「画像補正中の画像を保存する」に必ずチェックを入れよう。
  • 6月29日23時前 22時頃から観測準備をしよう(時間に余裕を持って)。
  • Seestar でNGC6818を導入しよう(南東方向、高度約30°)。
  • 観測開始(本番)前に、一度撮像テストをしましょう(露出は10秒で!)。
    ※ダークなどの撮像を事前にしておくため(本番の撮像がスムーズになる)。
  • 23時4~5分 22時25分頃から撮影をスタートさせよう。
  • 無事に小惑星が線状に写りこんだら、視野外に消えるまで撮影(スタック)を継続しよう。

 ご自身の観測地(緯度経度)における詳しい位置や通過時刻を知りたい場合は、Stellariumを使うと簡単に調べられます(参考: Stellarium に任意の小惑星・彗星を追加する方法)。
 ※今回は JPL の Horizons system を使いましょう!

 なお、今回の観測データとして重要なのは、スタックされたFITS画像ではなく、スタック前の個々に保存されたFITS画像となります。これは先の箇条書きの1番目の設定をすることで、Seestarの内部ストレージに別途保存されます(※ただしスタックが成功したファイルだけ)。この詳細設定の手順については以下をご参照ください:

観測前にSeetar の詳細設定「画像補正中の画像を保存する」に必ずチェックを!

【観測に強い方へ】
 もし可能であれば、NGC6818の視野外に小惑星が出たあとも、異なる視野で観測を続けてみてください。異なる視野・時刻・地域で観測されたデータもサイエンスに役立ちます!さらに付け加えるなら、観測開始は22時30頃 22時頃から始めてもかまいません。
 ただし、いずれの場合もNGC6818とは異なる視野になります。Seestar は任意の RA, Dec を入力して導入できないので、観測視野はご自身で星図から見定め、 2024 MK を待ち伏せておくと失敗が少なくて良いでしょう。観測の計画をたてるさいは、ステラナビゲーターや、Stellariumに 2024 MK を登録して、事前シミュレーションして待ち伏せ場所を決めておくと良いです。 ※今回は JPL の Horizons system を使いましょう!

観測に成功した場合について(報告)

 Seestarで観測された方は、是非以下のフォームより観測の簡易的なご報告をお願い申し上げます(測光作業は不要です)。画像データの報告方法については、別途検討したいと思っていますので、準備ができ次第、改めて報告者の皆様に E-mail でご連絡を差し上げます (From: Imamura Kazuyoshi)。

 

 その他、もし何かご不明な点があれば、この blog 記事のコメント欄に、ご記入ください。

 梅雨どきの急な観測テーマですが、一晩限りの一期一会な観測にチャレンジしてみませんか?Seestar で撮影したあなたのデータが、科学の発展に寄与するかもしれません!

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Stellarium に任意の小惑星・彗星を追加する方法

 Stellarium は小惑星や彗星のリストを一応持っているのですが、デフォルトではそんなに多くない印象です。プラグイン機能を使えば、MPC から大量のデータを DL して放り込むことができるっぽいのですが、今回は任意の天体だけを追加する方法について、備忘録的に書き残します(筆者の Stellarium のバージョンは 23.3.0 です)。

 Stellarium を開いたら、まず「設定画面」をクリックします。

 設定画面が現れたら、次に「プラグイン」を押します。

 続いて、左側のメニュー内から「太陽系エディター」を選び、「設定」ボタンを押しましょう。すると以下のような小窓が開きます。

 新たに開かれた小窓の中に、「太陽系天体」というタブがあるのでこれを押します。そして、「MPCフォーマットで軌道要素を取得」というボタンがあるので、これを押します。すると、以下のようにまた新しい小窓が登場します。

 また新しく出た小窓の中にある「オンライン検索」というタブを押します。すると、任意の小惑星や彗星を検索するための入力欄が出てきます。ここでは、ごく最近発見された (2024年6月16日) 小惑星 “2024 MK” について検索します。検索するときは、虫眼鏡のボタンを押しましょう。

小惑星 2024 MK が無事に追加できている様子.

 MPC にデータがあれば、検索にヒットしてくれます。チェックボタンを押して、「天体の追加」ボタンを押せば、自動的にStellarium内のリストに取り込まれます。ちゃんと追加できたかどうかを確かめたい場合は、先に登場した小窓「太陽系天体」のタブ内にある天体リストを確認すると良いです。

Stellarium で小惑星 2024 MK を表示している様子.

 無事に任意の小惑星・彗星が追加できれば、Stellarium の星図内で位置や見かけの明るさなどの情報を確かめることができます。

 なお市販(国産)のステラナビゲーターでは、彗星や小惑星のリストは、ソフト内で更新をかければ、ある程度新しく発見された天体も拾ってくれます。しかし、発見後間もない場合は、対応しきっていないこともよくあります。そんなとき、ステナビでは自分で軌道要素を打ち込めば、任意の天体を追加できます。この場合は自力で軌道要素を MPCJPL などで確認・入力する必要があります(移動天体に慣れた観測者であれば朝飯前な作業かもしれません)。ただ、この作業はあまりビギナー向きとは言えません。

 一方で Stellarium は、仮に軌道要素の意味を理解していなくても、MPC 検索にヒットしてくれれば、簡単に任意の小惑星・彗星を追加することができました。フリーソフトでありながら、このプラグインは初心者にも大変優しい機能といえるでしょう。


追記 (2024/06/28)

 新しく発見されたばかりの小惑星や彗星の場合、観測点が増えることで、随時軌道要素が更新されることがよくあります。その場合、予報の時刻や位置が少し変わることもあるので、綿密なスケジュールで観測を行う場合は、軌道要素の修正はやっておいたほうが良いでしょう。そのため、Stellarium であっても、自力の手入力による軌道要素の修正が求められる場合があります。以下、簡単にその方法を書き残す。

 まずは JPL の Horizons system より最新の任意の天体の最新の軌道要素を調べましょう(例: 2024 MK)。

※2024 MK のような NEA は、地球に近づくほど、地球の重力の影響を受けて刻々と軌道要素が変化します。このような天体の場合、JPL はこの影響を考慮して計算結果 (ephemeris) が作られます。しかしStellariumなどの星図ソフトでは、地球の影響が考慮されいないので、要注意です

 上記のような感じで2024 MKの軌道要素を呼び出してみると、以下のような情報が得られます(一部抜粋)。

JPL/HORIZONS                      (2024 MK)                2024-Jun-28 06:53:02
Rec #:50675288 (+COV) Soln.date: 2024-Jun-28_00:05:25 # obs: 120 (52 days)

IAU76/J2000 helio. ecliptic osc. elements (au, days, deg., period=Julian yrs):

EPOCH= 2460477.5 ! 2024-Jun-16.00 (TDB) Residual RMS= .11432
EC= .5479829575940028 QR= 1.009156750528175 TP= 2460501.9751860844
OM= 277.8791599915774 W= 13.22263263112265 IN= 8.456112803527166
A= 2.232563500607485 MA= 352.7685673489779 ADIST= 3.455970250686795
PER= 3.33591 N= .295459762 ANGMOM= .021500267
DAN= 1.01872 DDN= 3.34835 L= 290.9630177
B= 1.927562 MOID= .00188307 TP= 2024-Jul-10.4751860844

Asteroid physical parameters (km, seconds, rotational period in hours):
GM= n.a. RAD= n.a. ROTPER= n.a.
H= 21.803 G= .150 B-V= n.a.
ALBEDO= n.a. STYP= n.a.

 次に、Stellarium 内に保存されている 2024 MK の軌道要素を手動で更新しにいきます。そのためには、まず Windows の場合「隠しファイル」が見えるようにしておきましょう。その上で、以下のディレクトリまで辿り着いてください (XXXXの部分はWindowsのユーザー名です)。

C:\Users\XXXX\AppData\Roaming\Stellarium\data

 ”data” のディレクトリに辿り着いたら、そこに “ssystem_minor.ini” というファイルがいるので、これをメモ帳などの適当なエディタで開きましょう。その中に、2024 MK の軌道要素が記述された部分があるはずです。

 目的の天体の軌道要素の部分が見つかったら、あとは数値を JPL からコピペし、手動で書き換えていきます。書き換えが済んだら、上書き保存してください。そして、Stellariumを起動すれば、新しい軌道要素で小惑星や彗星を表示することができます。なお、コピペすべきパラメータの対応表は以下の通りです(※JPLは0.2122などを “.2122” という感じで、ゼロを省略しているので注意):

Stellarium の表記JPL の表記
orbit_SemiMajorAxisA
orbit_EpochEPOCH
orbit_EccentricityEC
orbit_AscendingNodeOM
orbit_ArgOfPericenterW
orbit_InclinationIN
absolute_magnitudeH
orbit_MeanAnomalyMA
orbit_MeanMotionN
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かんむり座T星の監視・観測キャンペーン開始

キャンペーンのバナー (日本変光星研究会より).

 日本変光星研究会のホームページに『反復新星かんむり座T星の爆発を監視しよう』というキャンペーン用の特設ページが立ち上がりました。しかも Seestar S50 を使った監視・観測キャンペーンになっておりまして、お察しのとおり、この blog の筆者が仕掛け人でございます。これまで Seestar を使った測光観測等の検証をやってきたのですが、次のステップとして、この望遠鏡で変光星観測を行う人が増えればと思い(普及活動として)、T CrB をターゲットにした次第です(何とか爆発する前にスタートできた良かった… )。これを機に、自分で測光するような人が増えてくれれば嬉しいですし、さらにこれまで変光星なんて一切興味の無かった多くの人たちの好奇心をくすぐることができれば幸いである。

参考資料 / これまでの関連記事など
SeeStar S50 を使った測光観測の検証
SeeStar S50 を使った食変光星の測光観測
SeeStar S50 を使った新天体の確認観測
天体リストに無い天体の導入 (Seestar S50)
デフォーカスを用いた明るい星の測光 (Seestar S50)
Seestar S50 で天体スペクトルを撮る
※これらの検証結果は2023年3月に明石市で開催された「天体画像教育利用ワークショップ」で発表しました。

なお Seestar を使った測光観測の検証や変光星観測への応用と普及については、南口雅也氏(星見屋)から依頼を受け、実践しています(謝礼や報酬の授受は一切ありません)。

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ジッツオ互換で AM5 を EQ6 ピラー脚に装着したい

コスモ工房さんで作って頂いたアダプター (T3746) の雄姿.これでEQ6 用ピラー脚へのAM5の着脱が楽ちんに!ノブネジの先端は樹脂系になっており、ボス部分に傷が入らない親切設計.

 以前、ZWO PE200 というハーフピラーを導入した記事を書きました。その後も、EQ6 付属の三脚とともに、遠征先や自宅で活躍してくれているわけですが… 人間おそろしいもんで、何か一つ解決すると次なる欲が湧いてくるわけで…

 そもそも ZWO の AM5 はオプションの三脚を見てもわかる通り、赤道儀と三脚の接続はジッツオ5型の互換規格で接続されます。純正のオプション三脚はそこそこ高いので、ユーザーの中にはアマゾンで見かける INNOREL RT90CG というジッツオっぽい三脚を使っている方もいるようです。

【左】AM5 + EQ6付属三脚の接続例.【中央】AM5 + PE200 + EQ6付属三脚の接続例.【右】AM5 + EQ6用ピラー脚の場合.いずれもコスモ工房さんのパーツを使用.

 はじめ、自分は AM5 を導入したさい EQ6 の付属三脚での運用を考えていたので、コスモ工房さんからアダプター T3391 を購入し、これを AM5 の底面に装着して観測していました(上図【左】)。しかしあるとき、望遠鏡と三脚の衝突事故を機に純正のハーフピラーを導入。これによって、AM5 の底面には冒頭の写真のとおり、ジッツオ互換のボスがつくことになりました。なおハーフピラーの底面には先の T3391 がくっつき、これで EQ6 付属三脚に接続できます(上図【中央】)。

 しかし、自分は EQ6 用のピラー脚も持っているので、自宅での運用時はこちらに AM5 を載せたくなるようになってしまいました(あぁ… なんて欲深い)。このピラー脚はキャスターが付いているので、これが何かと便利なのですよね。もちろん、コスモ工房さんのアダプター T3391 を使えば、ピラー脚に付属するメスパーツを使って装着できるのです。しかし、この方法は二つめんどいことがあります。

  1. EQ6用ピラー脚のメスパーツは、一度ピラーから取り外さないと、赤道儀との脱着ができない。
  2. 運用方法によって、T3391 をAM5側に取り付けたり、ハーフピラーPE200側底部に取り付けたり交換作業が煩雑になる。
EQ6用ピラー脚に付属している赤道儀接続アダプター.赤道儀との接続はピラー側のノブネジを使う.このノブネジはピラーに装着された状態では回すことが不可能.

 「このくらい贅沢言わず頑張ってやれよ~」って言われそうなのですが、兎にも角にも AM5 の底部パーツの交換はなるべくしたくないのです。1つの赤道儀に対し、脚への接続方法が混在していると、万が一遠征先でパーツを忘れたりしたら望遠鏡を組み上げることすらできません(実は1回やらかしましたw)。そこで、AM5の底部は純正のジッツオ互換ボスのままいくとして、ピラー脚のほうがどうにかならないか、特注パーツの製作をコスモ工房さんに相談してみることにしました。

コスモ工房製 T3746 をEQ6用ピラー脚に取り付けた様子.
ピラー脚との接続は T3746 側にネジが切ってあるので、3点できっちり固定されます.

 その結果、色々と試行錯誤して頂き、夢のパーツ T3746 をお作り頂くことができました。これはZWOの三脚やハーフピラーに使われているジッツオ5型互換系のボスを受けることができ、3点のネジで締め上げて固定することができます。もちろん EQ6 用ピラー脚に接続できる設計になっている優れモノです。このパーツのお陰で、ピラー脚への AM5 の脱着も大変効率的になりとってもハッピーになりました。

T3746 を介して AM5 と望遠鏡 (ミード25.4cm) を載せた様子.3点のノブネジで、ジッツオ互換ぼボスをしっかり締め上げて固定.

 AM5を載せ、さらに手持ちの一番重い機材ミード25.4cmとカウンターウェイトを載せてみました。特にガタつくこともなく、ガッチリ固定されており、夜の撮影でも安心して運用できています。コスモ工房さん、この度は大変お世話になりました m(__)m ペコリ

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